40年以上にわたる職業経験で培われた高齢者が保持する「得意」を「地方創生」事業でも活かして、そこにまた「生きがい」の源泉を見つけてもらうという期待を、新しくスタートアップする事業に込めておきたい。

図7  高齢者の自立志向出典:金子、2006:94

多世代間の共生の主役は高齢者

個人の「生きがい」追求と多世代間の共生をめざすことは、「少子化する高齢社会」が進行する21世紀における日本社会の目標の一つである。

岸田前内閣による『高齢社会対策大綱』でも、「年代を越えて、地域において共に生き、共に支え合う社会の構築に向けて、幅広い世代の参画の下で地域社会づくりを行える環境」(:5)の重要性が謳われている。

職業歴が長い高齢者は三種類のCIを体現している

前々回の「地方創生」(10月20日)論の末尾で、地方創生では三種類のCIを意識しておきたいとまとめた。

それらは「コミュニティ・アイデンティティ」、「コミュニティ・イノベーション」、「コミュニティ・インダストリー」であり、その地方や地域社会に根ざした資源を活用して製造して、販売まで念頭に置いた産業活動と整理した(金子、2024c)。

本稿でのべてきたように、この担い手としてその「まち」に長く居住してきた「ひと」である高齢者が措定される。

「産官学金労言」分野ごとに高齢者プールを用意する

10月4日に行われた石破首相の「所信表明演説」での地方創生の「主体」は「産官学金労言」であったが、全国1800の自治体の現状では、この6分野から現職の専門家がすべてそろうとは限らない。むしろかなり少ないと見て対応せざるをえないであろう。

そこで「産官学金労言」のすべてで、そこでの職業歴が長かった定年退職者のうちから、「地方創生」事業に関心をもつ高齢者プールを自治体ごとに用意しておきたい。

このOB・OGのグループと現職のコラボレーションが、第2期の「地方創生」元年である2025年の課題であり、これにより地方創生事業のための「ひと」不足からは解放されるはずである。

「地方創生委員会」への高齢者の参加