■無損失送電の「世界システム」構想
そんなテスラはある時、雨が降りそうな天候の際、雷鳴が轟いてから雨が降り始め、雷鳴と共に雨が止むのを見て閃いた。そして、天空には電荷の多い層があり、ある種の低周波(長波長)が常に定在している事実を突き止めるとともに、この定在する波にエネルギーを注ぎ込めば、遠くまで伝播できる事に気付く。
大気の電離層で8Hz、12Hz、20Hzなど様々な長波長の定在波(短波)が自然発生的に同調したり共鳴したりしている事をシューマン共鳴波と呼ぶが、波長が地球の直径の2倍、3倍、4倍と整数比で発生し、減衰している事実がある。ほとんどは雷によって自然に発生した電波が電離層を伝播して地球の裏側まで到達し、再び戻ってくる現象である。このシューマン共鳴波はごく微弱な電波なので、電波の汚染の少ない南極基地などで計測されている。
テスラはこの定在波のある電離層に、自ら考案したテスラコイルで高周波の電波を集中的に照射すると、電離層内に大きなエネルギーを持たせる事ができ、さらにそのエネルギーを12Hzに振動させる事で遠方まで送れると考えた。つまりテスラは、電離層を経由して電力を無損失で遠くに送り(アースさえしておけば)空中から電力を取り出せる――無損失送電の「世界システム」によって飛行船を制御したりプロペラを回転させる無線電気飛行機が実現すると構想したのだ。