■エジソンとの“電流戦争”
エジソンは、ナイアガラの滝における水力発電にも「直流方式」を大いに喧伝していた。テスラが推す交流方式の危険性を訴えるため、犬に対して交流電流を流して失神させる公開実験を行なったり、死刑執行などに用いる拷問装置まで作った。これに対して、交流の安全性を訴えるためにテスラが行った高周波高電圧変圧器の放電の下で本を読む実験はつとに有名である。
直流発電と直流送電にはどうしても2本の送電ケーブルが必要であり、かつ直流電圧は減衰が大きく長距離の送電を行うために中継器(電圧を上げて再送電する変電所)を何カ所も導入する必要があった。一方、交流の場合は送電ケーブルは1本、中継器も少なく発電効率も送電効率も優れており、歴史的には「交流方式」に軍配が上がっている。
しかしエジソンは当時、テスラを支援する投資家や企業にも悪質な嫌がらせを繰り返しており、その結果テスラへの支援打ち切りなどが頻繁に起きていた。エジソンとテスラの確執は深く、1916年にIEEEの最高勲章である「エジソン勲章」の受章を打診されたテスラは一度断っている。後年、テスラの過去の偉業に対してIEEEはニコラ・テスラ賞を創設している。