問題を長年放置した同社の信頼は大きく傷付き、消費者庁は24年1月、内部通報制度の運用に不備があるとして同社に改善を求めた。

活用が進まない実態がある。

消費者庁の23年度の調査で、体制整備が義務付けられた企業の約9割が導入済みだったが、導入企業の6割は受付件数が年5件以下にとどまっていた。相談・通報者の調査でも約3割が「後悔した」「良かったこともあったが後悔もした」と回答した。

通報したが調査が行われないほか、通報後の人事異動や評価で不利益な取り扱いを受けたとの理由が多い。

360度評価

判で押したように「上意下達で内向きな傾向があった」に対して対策として出てくる「360度評価やります」は不正を防止し、組織パフォーマンスを上げるためには扱いを間違えると逆効果を生むので、基本やらない方がいい。

効果的な運用は難易度が高すぎるからである。

いわゆる多面評価であり、上司、同僚、部下など、立場の異なる複数の評価者が、対象者の管理職としての能力を明らかにする評価手法だ。直属上司には観察しにくい対象者の特性が把握でき、人物評価の信頼性・妥当性を高められるとされる。

部下が上司を評価する場合、

①責任を負わないのに評価権限がある、という矛盾

②そもそも“管理職としての能力”に評価を下すことは管理職リテラシーのない者には困難である

③評価対象の管理職を評価するさらに上の上司の育成指導責任の放棄となる

以上3点の危険性が組織パフォーマンスをさげてしまう。

①はチーム全体の結果を負っている管理者が下すさまざまな意思決定は、メンバーにとって心地よいものばかりではない。

ただ、全体の最終的な結果責任を負っているからこそ方針やルール、戦略の決定権限をもっているという構造上、下は上を評価できない。部下に上司の評価をさせるという作業自体、組織構造、特に指揮系統に異常をきたす危険性があるため注意が必要である。