これらの法令や制度の導入により、日本企業のガバナンス体制は強化され、透明性やコンプライアンスの向上が図られている、とされている。
しかし残念ながら、法整備を固めながらも下記の代表的な不祥事を見てもわかる通り、外形的な、ハード面の整備のみでは不祥事を回避できないことは明らかである。
(参考)日本における企業の品質偽装や不正会計などの不祥事
2000年 – 雪印乳業:牛乳の再利用による品質偽装事件
2005年 – カネボウ:粉飾決算
2011年 – オリンパス:損失隠蔽のための不正会計(約1,177億円)
2015年 – 東芝:長期にわたる利益水増し(約2,248億円)
2016年 – 三菱自動車:燃費データの不正計測
2017年 – 神戸製鋼所:品質検査データの改竄
2018年 – スルガ銀行:不正融資
2021年 – SUBARU:データ書き換え問題
2023年 – ダイハツ工業:衝突試験の不正認証
社内制度面
内部告発
不正の発覚自体はその多くが内部告発だ。しかし、一連の製造業で相次ぐ検査などの不正の共通点のひとつに、現場にはびこる強い「ムラ意識」があり、本社が監査に乗り込んでも、不正の実態を解明することは容易ではない。
実際、日産自動車や神戸製鋼所の検査不正が明らかになった2017年には、経団連が加盟するメーカー約1300社に品質データに関する総点検を求めた。
多くの加盟社が実行したはずだが、十分な成果があったとは言い難い。本気で不正をあぶり出すためには、従業員へのアンケートなど旧来の手法だけでは不十分だろう。
また、不正が起きた事後の告発であるため、防止・予防の観点から効果は限定的と言える。
制度自体の改正も求められている。「内部通報しても事実確認せず当該の部長などに連絡が行くのみで、隠蔽されるか通報者の犯人捜しが始まるだけだ」ダイハツ工業の品質不正問題で第三者委員会が2023年12月に公表した調査報告書は、自社の内部通報窓口に対する社員の強烈な不信感を取り上げた。