はじめに:不正の連鎖、そして「上にモノが言えない雰囲気」

日本を代表する名門企業による耳を疑うような不正が続々と明らかになっている。IHIの子会社が船舶用エンジンのデータを改ざんしていた。燃費や排ガスの数値をごまかす行為は1980年代から続いており、この20年間だけでも不正の対象は9割弱の製品に及ぶという。

同様の不祥事は枚挙にいとまがない。ダイハツ工業、日野自動車、三菱電機など、いずれも有力企業だ。

トヨタグループの一角をなす豊田自動織機については、フォークリフト用エンジンの排出ガス試験において、法規に定められた手順を踏まなかったことが原因で発覚。この不正行為は、少なくとも2014年から行われていたとされている。

同社ウェブサイトに掲載されている「エンジン国内認証に関する調査結果について特別調査委員会調査報告書(公表版)」が極めて示唆深い。組織をむしばんでいくのです。

当該社員および管理職へのインタビュー返答が「」でほぼそのまま記載されており、身につまされる内容が記載されている。

特に後半は組織論に言及されている箇所が多数あり階層型組織の弱点が露呈している。

・開発室の室長等に対して、無理のあるスケジュールであるということを伝えたが、スケジュールが変わることはなかった。

・量産開始日を遵守するほかに選択肢はなく、量産開始日を遵守するためには、何らかの法規に反する行為に及ぶ必要があるものと認識していた。しかし、グループマネージャーに対して、メールで量産開始日を遵守するよう露骨に指示することははばかられたため、メールに返信することはしなかった。

・上司に相談したところでどうせ『何とかしろ。』などと言われる雰囲気があり、技術部長に相談したとしても無駄であると半ば諦めていたため、技術部長に報告することはなかった。

・「産業車両用エンジンの開発部門においては、上司に相談したところでどうせ『何とかしろ。』などと言われる雰囲気があり、技術部長に相談したとしても無駄であると半ば諦めていたため、技術部長に報告することはなかった。技術部長経験者らは開発スケジュールに無理があったとは認識していなかったと口を揃えているし、週報にトラブルの記載があったことなどにも十分に意識に止まらなかったなどと述べている。