抜粋:豊田織:エンジン国内認証に関する調査結果について 特別調査委員会調査報告書(公表版)より
例として豊田自動織機の第3者委員会による報告書をあげたが、ほぼすべての不祥事に関する報告書類には判で押したように「上にモノが言えない雰囲気だった」という種類の述懐がなされている。
一方で、まとめ部分の、「不正の防止という観点からは、「人は不正を行うものである」との前提に立った対策を講じることも重要である。(中略)人の恣意的な介在を排除し、不正が入り込む余地をなくすことが可能となる。」が弱点克服のヒントになる。
本コラムでは、一連の不祥事から階層型組織の弱点を捉え、階層型組織のままその弱点を克服する方策を検討したい。
Ⅰ:階層型組織の弱点と「不正のトライアングル」 不正のトライアングル不祥事の発生メカニズムとして米国の犯罪学者ドナルド・クレッシーの研究をもとに、会計学者のスティーブ・アルブレヒトがモデル化した「不正のトライアングル」というフレームワークを用いたい。
不正は動機・機会・正当化の3要素がそろった状態で発生しやすいとしている。一連の自動車業界における認証不正。
これに関連する調査報告書でも納期へのプレッシャーが動機となり、品質部門の脆弱性が機会を創出し、品質に問題がなければよいと正当化する、という3要素の存在が指摘されている。
また、以下の問題も指摘している。
動機:納期を厳守しながら規定通りの検査を実施するという、同時に果たせない複数の要求が課せられジレンマが発生していた
機会:軽微・グレーな行為から始まって一線を踏み越えた
正当化:改善の声をあげても上司支援が得られず、致し方なしという雰囲気の醸成
「不正のトライアングル」はまさに負の連鎖であるが、階層型組織における最大の弱点=情報流通不全が事態の発生・悪化を助長し、予防・防止を阻害している。
情報伝達の遅延: ピラミッド型組織では情報が上から下へと階層的に伝達されるため、情報が変形したり、遅れたりする可能性がある。
情報の歪曲: 中間層による情報の絞り込みや加工が保身などの目的で行われることがあり、組織内での情報の歪曲が生じる可能性がある。
コミュニケーションの障壁: 階層が多いピラミッド型組織では、部門間や階層間のコミュニケーションが円滑でない場合があり、セクショナリズムや部分最適化が台頭し、協力が難しくなることがある。
創造性と革新の抑制: 上層部の意思決定が中心となるピラミッド型組織では、従業員の創造性や革新が抑制され、ボトムアップでのイノベーションが生まれにくい。