原因の一旦としてダンバー数(人間が安定した社会関係を維持できる限界数、約150人とする説)が挙げられる。

具体的には、

1. 組織構造の複雑化 組織が成長し、部門やチームが増えると、管理が複雑になり、部門ごとの独立性が強まり、各部門が独自の目標や方針を持つようになる。

2. 物理的距離 部門やチームが異なる場所に配置されていると、日常的コミュニケーションが減少し、情報共有が困難となる。

3. 専門化の進行 各部門が特定の専門領域に特化することで、専門知識やスキルが部門内に集中し、他部門との協力が困難となる。専門知識の壁が相互理解不足を助長する。

4. 部門間の競争意識 部門間の競争が過剰になると、協力よりも競争が優先され、情報の隠匿やリソースの奪い合いが発生している。部門間の競争が組織全体の最適化を妨げる要因となる。

これらは一定のスケールアップした組織では必ず起きるものと捉え階層組織の弱点である情報の流通不全を引き起こすものとして含み置く必要がある。

アイリスオーヤマ株式会社の大山会長も著書の中でこう語っている。

「どの企業も、もともとは何かしらの事業を顧客に提供したくて組織をつくったはずです。組織を存続するために事業を開始した会社は一つもない。しかし長く経営を続けていると、組織が事業をするための手段ではなくなり、組織を維持することが目的で、事業がその手段になるという逆転現象が起きやすくなる。それは結果的に組織をむしばんでいくのです。」

『いかなる時代環境でも利益を出す仕組み』大山健太郎著

参考著書②「なぜ人と組織は変われないのか」ロバート・キーガン

免疫マップとは、キーガンが提唱する、人や組織が変革に対して無意識に抵抗するメカニズムを可視化したツール。

これは、個人や組織が変わりたいと思いながらも、その変化を妨げる無意識の行動や信念を持っていることを示すものである。キーガンはこれを「心理的免疫システム」と呼び、人や組織が安定を保ち続けるために無意識に行っている自己防衛的なメカニズムとして説明している。

「批判を避けるためにフィードバックを控える」 「重要なタスクを先延ばしにする」 「他人に嫌われたくない」 「失敗することを避けたい」 「他人に批判されたら自分の価値が下がる」