カオス現象の持つ「ある物理的な対象にわずかな変化を与えると、その後の状態が大きく異なり予測できない現象を見せる」という特性はバタフライ効果という名前で呼ばれることもあります。

この単語は様々な漫画やアニメ、映画などで使われているため聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

エドワード・ローレンツの肖像
エドワード・ローレンツの肖像 / Credit:Wikipedia Commons

このバタフライ効果という表現は、気象学者のエドワード・ローレンツが1972年にアメリカ科学振興協会で行った講演のタイトルに用いられた「ブラジルの1匹の蝶の羽ばたきはテキサスで竜巻を引き起こすか?」という表現に由来すると考えられています。

ここでいう蝶の羽ばたきは小さな変化、すなわち初期値のわずかな差を意味しています。

そんな僅かな初期値の差が、ブラジルから遠く離れたテキサスで竜巻を起こしてしまうかもしれない。

これはあくまで極端な例題ですが、蝶の羽ばたきからは想像できないような大きな影響が生じるかもしれない、というカオス現象を考えることの難しさを「バタフライ効果」は簡潔に表現していたため、世界的に有名な用語になりました。

バタフライ効果はローレンツが気象学者であったことからも分かるように、元々は天気予報という日常生活に馴染みのある分野の予測不可能性を説明するために生まれた言葉です

天気予報では流体力学の運動方程式をモデル化することで予測を行っています。

ところがこの運動方程式の解はカオスの性質を持っており、ローレンツが主張した通り決定論的に未来を見通すことは不可能でした。

運動方程式の厳密な解を求めるための初期値やモデルが分からないだけでなく、誤差がどれほど大きくなるかも予測が難しく、事前に知ることはできません。

しかしそうはいっても、現在の天気予報は数日程度であればかなり正確に行うことができます。

いかにして人類はこれを実現させたのでしょうか?