アメリカ主犯説なら、金利安 → 株高だから、日本の株価は上がるはずであり、暴落を説明することは到底できない。

AIが犯人とも示唆されている。「名もなき暴落①」で紹介したように今回の暴落で利益をあげた投資ファンドもある。AIの頭脳が秀れ、人間以上に見通しが効くなら8月5日の午後に買い、翌日に売った。8月5日より以前に売っておいて、暴落時に買い戻した。本当にそうなのか?

教訓

翁氏のエピローグが教えてくれた重要なことがある。それは日本銀行のプロパーの幹部(OBも含めて)が黒田時代に強い嫌悪感を持っていることだ。

「ひたすら自分の信念や意見を一方的に開陳し苦手な記者や答えたくない質問は無視する、という強権国家的な記者会見」

(同上書、 P.281)

これは黒田時代のことだろう。上田総裁はこれとは対極の対話重視だが、これがいまのところ裏目に出た。

日銀の知られざる、かつ驚くべき事実も書かれている。「現在の総裁記者会見は、記者の再質問を許さないという慣行が維持」されている。こういう暴露は日銀関係者にしかできない。

上田総裁は黒田氏によって後継指名された。だから就任当初は“緩和継続”を言明していた。でも、時の経過とともに日銀内部にある“黒田時代からの脱却願望”を感じとったのかもしれない。それは、自らの理論にも学者の良心にもかなうものだ。総裁自身が過渡期におかれているのかもしれない。それが発言の曖昧さになり翁氏のいうアンラッキーな結果となったのだろう。

実物経済への影響

株価は現時点(10月18日(金))で暴落前の水準に戻っている。翁氏の言うように一過性だったのかもしれない。しかし暴落前に買って、例えば年初に新NISAで買って、損をした人と、その後に買って得した人が同一人物とは限らない(同上書. P. 275)。

むしろ暴落であわてて売った人が翌日に買うのは心理的に難しいから、大きな損失、評価損が日本のあちこちに発生している。それは逆資産効果をもたらす。だから、いまでは済んでしまったことのような暴落が物を言いだすのはこれからなのである。