翁邦夫著『金利を考える』(筑摩書房、2024年10月)

この本にはエピローグが附され、そこで8月5日の暴落が論じられている。翁氏がこれを書かれたのは8月末とあるから、本シリーズの「名もなき暴落①」と時期は一致する。

以下、私のコメントを混じえて内容を紹介する。

問題にすべきニュースは三つ。それを日付と時間を入れて示す。

(1)短期金利の引き上げ発表 7月31日(水)12時56分

(2)今後の金融政策の方向について植田総裁の記者会見 7月31日(水)15時30分

(3)アメリカの景気指標の発表 ・製造業景気指標 8月1日(木)23時(日本時間) ・雇用統計 8月2日(金)21時30分(日本時間)

翁氏の結論を要約すると、(1)は株価には無影響、(2)は影響したけど“さざ波”程度。暴落の主要因は(3)、ということになる。

コメント

(1)は事前に関係マスコミが予想していたとおりだったから影響しないのは当然。問題は本シリーズ「名もなき暴落①」で取り扱った(2)。7月31日の株式市場は始値から日経平均が1000円以上も高かった。短期金利の引き上げ幅が予想どおりと見たのである。

この日の変動幅は1200円程度。しかし引けにかけて下げ、終値は575円高(表1参照)、この時間、まだ(2)の効果は発現していない。

表1 日経平均株価225種(2024年7月31日~8月6日)

8月1日(木)。始値から一貫して下げ、一日の変動幅は1050円。終値は975円安。

つまり戻す場面はほとんどなかった。前日の引けの下げをプラスすれば1500円の下げ。

翁氏の“さざ波”は過小評価だろう。総裁発言が曖昧であっただけに、その解釈に市場は時間をかけた。タイムラグである。

そして8月2日(金)。朝から下げた。翁氏の理解は、7月31日の総裁発言は8月1日の相場が吸収していたから、この日の下げの要因はアメリカの製造業景気指標だというものだ。そして、8月2日、日本時間夜のアメリカ雇用統計が、週をまたいで8月5日月曜日に暴発したとする。アメリカ主犯説だ。