株式(=有価証券)保有はどうだろう。政策保有株式(いわゆる「持ちあい株式」)が多いとすれば、資本効率や企業ガバナンスの観点から「株式保有が多すぎる」と言えばいい。
これらの財産について、個々に問題点はあるかもしれないが、無駄な財産を持っているとしても内部留保の金額が多いことが原因だと決めつけるのは絶対におかしい。これらの財産は内部留保だけではなく借金でも調達可能であり、個別に問題点を検討すべきである。しかしそうではなく、なぜか内部留保が一番問題らしい。
では次に、内部留保≒利益剰余金とされているので、利益について考えたい。
売り上げから経費や税金などの費用を除いたものが利益であり、配当などの利益処分がされた後の毎年の利益が積み重なったものが利益剰余金、すなわち内部留保である。
ここでいう費用でよく問題になるのは、人件費であり法人の所得税である。これらは、利益の出方を説明する損益計算の項目であるが、先に述べたように利益が出て利益処分がされたあとに初めて利益剰余金(≒内部留保)となるので、「人件費や法人税の問題」=「内部留保の問題」ではない。内部留保は「黒字になった」という結果である。
そのうえで、人件費が少ないことが問題であるとするならば、「人件費を増やすべきである」とそこに絞って言えばいい。
また、法人税が少ないことが問題なら、「法人税をあげるべきである」とそこに絞って言えばいい。
さらにいえば、人件費や法人税ではなく、企業の利益が多すぎること自体が問題であれば「企業は利益を出しすぎなので、人件費や法人税などを増やして利益を減らすべきである」と言ってもいいだろう。立憲民主党をはじめ左翼の政党やオールドメディアの主張はこれだろう。
しかし、人件費や法人税を増やして「利益が減っても」、内部留保の「増え方は減る」が、赤字にならない限り(厳密には配当などの株主還元などもしない限り)内部留保の「総額が減る」ことはなく、内部留保の積み上げは続くのである。