もちろん、個々の問題があるからそういう内部留保が増える結果になるというのはわかるが、そうだとしても、結果を対策するのではなく、その原因をつぶすべきである。なぜそうならないのかが理解できない。
ここまでいえば 私の疑問はご理解いただけたと思うのでここで論を終えてもいいのだが、それでも、「いや、内部留保が悪いんだ」という方がおられるような気がするので、少し長くなるが、問題点を順に見て、よくいわれる問題について「内部留保が原因」なのか、「内部留保を減らせば解決するのか」を考えていただきたい。
最初に、貸借対照表の左側(ある時点の財産)の問題点を見てみよう。
まずは現金・預金である。現預金が多いのであれば、「お金をため込みすぎだ、会社は現預金を使ってもっと企業活動に活かせ」ということを主張する方がいるかもしれない。現預金が多かったことでコロナ禍の収入減に対応できた会社が少なくないことを思えば、議論の余地はあるが、意見としてはおかしくはない。が、それなら「現預金が多すぎるのは問題だ」と言えばいいのである。
内部留保の問題点を解説しているものを見ると、「内部留保が多い」=「お金が余っている」と混同して解説しているものが多いように思う。なぜあえて混同するのだろうか。両者は一致しないのに・・・これでは問題点が見えなくなる。
「現預金に課税しよう」という正直な意見もある。ある意味、主張としてはもっともであるが、しかし、そういった意見の人の中にも、なぜかその理由として、内部留保が問題だから、とこれを悪者にしている方が多い。
次に固定資産を考えてみる。固定資産が多いとすれば、それが適切なものかどうかは別として、企業のお金が設備投資に回っているということであろう。これは少なくとも国内で有効に投資されている限りは内容にはよるものの、大きな問題があるような気がしない。もしそれが海外への投資であれば、国内産業の空洞化の観点から、「海外への投資が多く国内投資が少ないのが問題」と言えばいい。