ある意味、「会社がきちんと儲かって成長している証」が「内部留保の増加」なのである。利益の増加の原因は内部留保の増加ではなく、内部留保の増加の原因が利益の増加なのである。内部留保を悪者にしても、利益増の説明にはならない。そこまでわかっているはずなのに、やはりこれらも、そうではなく、内部留保が問題らしい。
百歩譲って、これらの項目みんなが大問題だというとしても、その原因を内部留保でひとくくりにするのは意味不明であり、問題点が見えなくなるだけである。「内部留保を減らすこと」≠「これらの問題解決」なのに・・・。
現預金が大きいこと、人件費が少ないこと、海外投資が大きいことなどなど、が問題ならそういえばいいし、課税して税収を増やしたいなら、そういえばいい。そういっている人もいることはいる。しかし、すべてをひっくるめて内部留保を問題視する意味が私には理解できない。
ついでに言うと、内部留保に対する課税については、現預金への課税よりもさらに理由付けに無理があるが、財源という意味では可能性があるので主張すること自体は理解できる。
内部留保課税は企業の投資意欲をそぐとか、2重・3重課税である、とかいう問題点を指摘はされているが、前者は法人税率と同じく考え方(政治信念?)の問題だし、仮にこれを多重課税とみなしてもそういう税は他にないわけではないので、ここでは現預金課税と同じく、良い悪いは議論しなかった。課題として別途考えればいいが、ただ、内部留保が多いからという理由で課税する、というのは理解できない。現預金をほかに使うこと・税収を増やすことが目的ならそういえばいいのである。
カンタンに内部留保を減らすには、こういう個々の問題点を解決しなくとも、①赤字にするか、②配当を増やすまたは自社株買いをするか、でできるのである(比率を変えるには、借金をしまくるという手があるが、企業の税対策としては意味がない)。