なお、マスメディアは「移民問題」を治安の角度から見る傾向が強いようです。しかし、米国民の中でも低学歴・低賃金の人たちにとって非合法移民激増の最大の脅威は、アメリカ人なら敬遠するほどの低賃金でも喜んで仕事をする人が増えて自分の職が奪われることです。

また7月から8月にかけて「政府の政策」という選択肢の得票率が急落しています。これは民主党大統領候補が高齢で衰弱の激しいジョー・バイデンに代わってずっと若いカマラ・ハリスになったので「政策にも変化が期待できる」という理由で下がったようにも見えます。

ですがその後の展開から考えると、民主党支持者たちはこの頃から民主党候補が勝てるという希望を失っていて「どうせ次の政権はトランプになるだろうから、あまり政府の政策に注文をつけても意味はない」と思い始めていたのかもしれません。

つまり、「職務に支障を来たすほど老衰の進んでいたバイデンの代わりにもっと有望な候補を立てたとしても負け戦で経歴に傷がつくだけだから、ここは無能なバイデンのもとでさえ指導力を発揮できなかったハリスを敗戦処理候補に擁立した」というわけです。

下段は「いくつかの重要問題のうちでもいちばん重要な問題は何ですか」という質問への答えですが、2022年末に45%強で天井を打ってから下がっていた「経済一般」の比率が、大統領選が近づくにつれて再上昇に転じています。

金融業界やハイテク大手各社のあいだでは「株価が上がり続けているうちは経済は安泰だ」という考え方がまかり通っていますが、実体経済の世界に住んでいる人たちの印象はまったく違います。

現在のアメリカ経済はまだ「景気後退宣言」が出ていないだけで、すでに景気後退は始まっていると見る人が多いようです。低迷色の濃い経済指標の中では、比較的強めな数字になっている「良い仕事の探しやすさ」という質問への答えも、実態は驚くほど暗いのです。

上段を見ると、ロックダウンなどによって職探しが非常にむずかしかった2020年とは打って変わって、2021年後半から2022年初頭には「良い仕事を探しやすい」という回答が70%を超えていました。