アトランタ連銀の賃金トラッカーではついに転職者の賃金伸び率と非転職者の賃金伸び率がほぼ並んだ。これは転職によって得られる昇給の方が高いところから減速してきた結果であり、転職で著しく昇給できないなら当然離職率は低下する。もっとも全体の景気はまだよいので、転職しなくても労働者側はある程度の発言権を維持しており、非転職者の賃金伸び率も健全に維持されている。

失業者の内訳分析

また、失業率の上昇の「背景の大半は解雇ではなく移民流入による労働者供給増によるもの」と前回の記事は決め付けていたが、失業者の内訳を更に詳細に見ていくと、大半とは言いすぎであった。

2022年以降、新規参入の失業者は確かに増えつつあるが、やはり仕事を失った失業者と再参入者の方が大きく増えている。つまり、流入した移民はたとえ洗礼のような失業期間を体験したとしてもそれはあまり長続きせず、新たに増えた失業者の大半は伝統的な失業であり、労働需要の弱まりを示唆している。

これは移民の流入が労働市場に与えた影響が小さかったと言いたいのではない。米国生まれの被雇用者はパンデミック前後でほとんど増えていない。それに対して、縮尺は左右で異なることに留意する必要はあるが、外国生まれの被雇用者は一直線に増えている。

移民労働者が労働需給の逼迫を防いできたが、そうやって労働需給が緩む過程で通常型の失業も増えてきた、というのが全体像である。

解雇界隈:失業保険申請とチャレンジャー

前回の記事でも少し触れたが、新規失業保険申請件数(Initial Jobless Claims)はチャレンジャー人員削減に半年弱遅行するのが本ブログの仮説である。

これはリストラや解雇の予定が発表されても、実際に労働者が解雇されるまでにタイムラグがあったり、退職パッケージ(severance package)が支給されることで失業保険受給資格の獲得が遅れたり、特にその場合は失業保険を申請する前にまず職探しを試す傾向があるためである。