となると2024年末時点の政策金利は4.3%に着地する可能性が大きく、従って米国長期金利の4.3%超えはたとえあったとしても何も考えずに目を瞑って債券を買える水準となる。

一方、中国発コモディティ・デフレの勢いもすっかり衰えた今、米国長期金利の3%前半突入もベバリッジ曲線の平坦区間入りを待つことになるだろう。

陰謀論

サームルールの正体を熟知している本ブログ読者にとっては9月の雇用統計の良さは特に驚きはないだろうが、雇用系の指標を勝手なイメージで、或いはもっと怠惰に最近の値動きで覚えていた人々の間では納得しがたいほどサプライズだったのだろう。

共和党陣営の一部はこの数字をフェイクと呼んだ。そうでなくとも大統領選の両陣営が活動員をたくさん雇ったため雇用統計がよく見えたのではないかという穿った見方が見られたが、NFPの業種別の数字も公表されているので、こういった陰謀論が入り込む余地は大きくない。

増えているのは主に教育、ヘルスケア、レジャー、ホスピタリティであり、この傾向は7月から一貫している。一方、選挙キャンペーン活動員の雇用主は多くの場合はNPOか広告代理店であり、前者は「その他サービス」、後者は「専門職・ビジネスサービス」に主に分類されるはずだ。どう考えてもレジャーではない。純粋な選挙の管理スタッフは「政府」にカウントされることもあるが、「政府」も「専門職・ビジネスサービス」も増え方は明瞭ではない。「その他サービス」は確かに増えたものの、NFPのトレンドを変えるほどの幅ではない。

一方、大統領選がもたらす将来の政策の不確実性のせいで「製造業」が減少したとする声もある。やはり経済指標をシングルストーリーで語り切ろうとするのは陰謀論と紙一重なのである。

【要約】

9月分雇用統計はホームラン級の堅調さ 7月分雇用統計から始まるサームルール懸念は消滅 離職率は低迷しており、賃金インフレは依然遠い 失業は「新しい移民が仕事を待っている」だけではなく、通常型も 解雇件数は一進一退、近い将来の失業保険申請件数も同様だろう 求人失業者数比率は1倍割れ遠ざかる、ベバリッジ曲線平坦区間も 2024年は100bp利下げ実現可能、米国長期金利は3.5%~4.3%続く