自転車か、それともロバか?
ある日私は、ルクソールに住むホダの親戚の家に家族で一緒に泊まりがけで遊びに行きました。都会のギザとはまた違ったエジプトの田舎の暮らしも体験できて、とてもウキウキしました。
ホダのおじさんは農業をしていて、さとうきびなどを作って生計をたてていました。
おじさんはある程度お金が貯まったらしく、そのお金で自転車を買うかロバを買うか、どっちがいいか迷っているんだと話していました。
ホダの話では、(当時は)ロバも自転車も同じくらいの値段とのことでした。
私は考えてみました。人と荷物を乗せて移動ができるという利点はどちらも同じ。ですが、自転車は早いし乗り心地も良い。しかもかっこいい。運動にもなる。
でもロバはかわいいけど生き物。毎日エサが必要。病気になるかもしれない。しかし、自転車は修理をすればずっと乗れる。エサ代に薬代・・馬鹿にならないし、迷うことも無いじゃないと思ったので、私は「おじさんは自転車にしたんでしょ?」と言いました。
するとホダは「それが、ロバに決めたみたい」と意外な答えが返ってきたのです。
ホダは「ロバはね、人がついていなくても畑から家まで自分で物を運ぶことが出来るの」と教えてくれました。たしかに自転車ではそれは不可能です。
その後、荷物を乗せて単独で歩いているロバを実際に見かけたのですが、「ロバって本当に賢いんだ!」とこれまた驚いたのでした。
普通の生活って?
さて、働くでも学校に行くでもない私は、普段は買い物に出掛けたり、散歩に行ったり、時にはラクダに乗ったり、馬を1日レンタルして、砂漠を駆け回ったりもしました。地平線の見える砂漠で、馬に乗って走るのは最高の気分でした。
散歩はというと、ほぼ毎日していました。家から歩いて5分ほどでピラミッドやスフィンクスのエリアに行けるので、よくぶらぶらとあちらの方まで散歩に行っていました。ですので、ピラミッドのエリアは自分の庭・・・いいえ嘘です(笑)、近所の公園のような感覚でした。今はピラミッドもスフィンクスも入場料が要りますが、その当時は無料だったのです。まだスフィンクスの前にピザハットもケンタッキーも無かった頃です。
日々の買い物はというと、近くにスーパーがなかったので、いつも青空市場でお米や野菜、豆などの食材を買っていました。
お米は量り売りです。家に持ち帰ると、必ずやらなければいけない作業がありました。お米の中に小さな石が入っているので、それを手作業で取り除いていくのです。
大きなお盆にお米を少しずつ出しては広げ、石がないか探します。これは女性の仕事で私もよく手伝っていましたが、エジプト人女性は大変だなぁとつくづく思うのでした。
そうそう、水道代は近くの銀行に行って、現金で払っているのを実際にこの目で見ました。いつも窓口に大勢の人が並んでいたので、支払いをするのも一苦労のようでした(あくまでもその当時の様子です)。
<この馬に乗って砂漠を走りました。もう一頭は同行していたガイドさんの馬>