調和型・尊重型リーダーシップは「人との向き合い方」で変化する

そこで実は、私は堂島さんにたった一つだけアドバイスをしました。それは、「人との向き合い方」です。

私がミーティングで拝見した堂島さんは「常に意識が自分の心の内側に籠ってしまっている状態」でした。恐らくですが、「次、何をどう言おうか?」「どう上手く伝えようか?」「こんなことを言ったらまずいかな?」等々、様々な迷いの中で逡巡していたのでしょう。

私は堂島さんに下記のようにお伝えしました。

竹内:「目の前の人の顔や振る舞いや雰囲気を、観察し続けていてください。評価も解釈も何もせず、ただ“あるがまま”を楽しみながら観察し続ければいいです。」
堂島:「観察だけで良いのですか? すると思考がまったく働かなくなりますが・・・」
竹内:「はい、大丈夫です。何も思考しなくて結構です。ただ楽しみながら『あるがまま』を観察していてください。すると直観的に、その人にお話ししたいことが浮かんできます。そうしたらその通りにお話ししてみてください。」
堂島:「何も浮かばなかったらどうすれば良いですか?」
竹内:「その場合は、何もお話ししなくて結構です。」

最初堂島さんは半信半疑の状態のようでした。この向き合い方にどんな意味があるのだろう?と訝しがりながらも、「わかりました、やってみます。」とおっしゃいました。

堂島さんの会社は、半期に一度、上司が部下と1on1で面談します。ちょうどその時期でしたので、面談においてその「向き合い方」を部下の方へ実践していただきました。

面談の1日目が終わったところで、さっそく堂島さんからメールをいただきました。そうしたら、彼女はかなりお喜びの様子でした。

「言われた通りやってみたんです。そうしたら、とても楽ですね!面談は私自身がいつも苦痛だったのですが・・・。しかもやっているうちに、直観的にいろんな質問が私の中から浮かんできたんです。それをそのまま投げてみたら、すごく面談が盛り上がりました。部下の皆さんがあんなに本音で仕事の話を私に真剣にしてくれたことはありません。」と。

やはり予想通りだったな、と私も嬉しくなりました。

堂島さんには「人をサポートしたい」という強い想いが、もともと潜在的にあります。そういった人が「自分の心」にではなく「相手そのものに」意識を向ければ、それだけでその場の雰囲気は変わります。しかも、自分の思考に捕らわれないことで、自然な直観・ひらめきも多くなります。