似て非なる「自信」と「確信」
さて一方で、「自信」と似て非なる言葉に「確信」という言葉があります。
私は様々な企業現場で、「確信を持つ人が道を拓く瞬間」を多種多様に目の当たりにすることができました。
「自信」と「確信」は、よく似た言葉のように思えますが、その本質はまったく異なるのではないか、というのが私の現場感覚です。
例えば、「自信のある人ほど、確信のある判断と行動がとれる」と一般的には思われがちですが、企業の現場で起きているのはむしろ逆の現象でした。つまり、「自信のある人ほど、確信から遠のく」という事実です。
「自信」と「確信」は、まるで反比例するかのような事例が、あまりにも多かったのです。
だからいつの間にか私は、「リーダー・管理職に自信を持つことは必要ありません。むしろ、確信を持ち行動する人になりましょう」とアドバイスすることも多くなりました。
では「確信」とは何でしょうか。それは、どうすれば引き起こされるのでしょうか。
「自信」は「確信」を阻害するのでしょうか。それとも、助長する役割でしょうか。
私の現場経験を元に一つの事例をご紹介しながら、「確信」と「自信」の違いについてと管理職やリーダーにこそ必要なのは確信であるという点について考察していきたいと思います。
ある「自信」のない管理職
あるIT系企業に堂島さん(仮名)という女性管理職がいらっしゃいました。
私が堂島さんと出会ったころ、彼女は管理職に抜擢された直後でした。周りに常に気を遣い、丁寧な仕事を進めるところが評価されたようです。
しかし私の前で堂島さんはいつも部下育成に頭を抱えていらっしゃいました。そして二言目には、「自信がありません」という言葉をいつもお話しされていました。
自信のない理由をじっくり聴いていくと、結局はいつも同じところにたどり着きました。
つまり、
・IT技術のない自分が上に立ち、IT技術のある部下に対して指示やアドバイスを出さなければならないことに不安がある。
・社長の判断が正しいと思い切れない状態で部下にその指示を伝えなければならないことに不安がある。
・部下への自分の伝え方はこれで良いのか。人を傷つけたり誤解を生んだりするのではないかという不安がある。
とのことでした。
私も試しに、堂島さんが社員さん達と行うミーティングを見学させていただきました。
確かに私の目から見ても、堂島さんはいかにも自信がなさそうにしていました。
そしてその雰囲気のために、他のチームメンバーから次々に反対意見や拒絶、さらには詰問に近い質問が飛び交っていました。これを拝見し、堂島さんが「自信がありません」と漏らしてしまう気持ちもわかるようでした。
堂島さんとしては「管理職を降りたい」という話さえも、すでに社長にされているようです。
しかし社長としては、堂島さんの管理職やリーダーとしての可能性をぜひ伸ばしたい、という考えがあり、それもまた私はよく理解できました。
なぜならば、私の印象では、堂島さんは管理職やリーダーになることで、本来の個性を抑え込んでしまっているように見えたからです。
もっと「本来の自分」をそのまま管理職やリーダーとしての役割として表出させれば実に楽なのだろうと、私も社長も同じ意見でした。