あともう一つは、ディフューザーがリリースされるまでに確実に時間がかかること。ディフューザーの開発に1年半もかかったんですよ。そうなると、「香りをデジタル化して配信します」と事業を発表しても、実際に製品が世に出るまで何もできないことになってしまう。それでは良くないから、まずはトークンを発行して興味を持つ人たちをユーザー化しようと。

なので、事業の設計・展開において、トークンが必要不可欠なツールだったんです。ディフューザーがない段階で、NFTとトークンという技術を使っていなかったら、今のコミュニティは見てくれないし、事業としてスタートダッシュを切れなくなってしまうんです。

可能性は未知数、匂いのデジタル配信はどこまで拡大するか

トークンと組み合わせたDePIN事業者のHorizonだが、実態がある匂いビジネスについては今後、タレント・音楽・ゲーム・アニメ、映像コンテンツなどエンタメ全般だけでなく、 広告やインテリア、医療など、 幅広いジャンルでの提携を見込んでいる。Scent Storeをローンチし、子会社を設立したインドネシアでは、ラフレシアの匂いをデジタルで体験できるといった学生の学習体験向上の可能性を提案している。


――教育分野を含め、匂いビジネス単体でもほぼすべての業界・分野での展開が可能と思いますが、これから特に注力したいところはありますか?

Alex:最初はエンタメの分野でスタートしていくんですけど、このインフラがどういう使われ方をするか、僕は正直分からないんですよ。 僕の仕事は当社のインフラを整備することで、その中で「香りのiTunes版」にあたるサービスを作りました。このインフラが活用されると、将来的にはまったく異なるサービスが生まれる可能性があるんですよ。

たとえばゲームと連動して、「ゲーム内で銃を発射すると火薬の匂いがする」とか。あとは広告ですね。Uber Eatsのメニュー画面を見ていて、マクドナルドが表示されたらハンバーガーやポテトの匂いがするとか。あるいは、無料で配られるディフューザーが登場して、機械そのものは無料なんだけど毎日午前11時になるとマクドナルドの匂いがする。そのディフューザーのスポンサーはマクドナルドさんでした、みたいなことがあり得るんです。