事案の性格上、検察内部だけで判断することでは適切な判断が期待できない場合もある。

公務員による職権乱用などの罪について、検察官の不起訴処分に不服がある場合に、裁判所に事件を審判に付すよう請求できる「付審判制度」がある。

これは、公務員職権濫用罪等の特定の公務員犯罪は、警察官・検察官が職務熱心の余り、その行為が違法と評価する程度に達していた場合に、検察官はその行為の結果の恩恵を受ける立場にあり、利害関係を有するため、本来であれば起訴すべき警察官の職権濫用行為を公平中立に起訴するとは想定できないという考え方に基づくものである。

最近では、プレサンスコーポレーション事件での大阪地検特捜部の検察官の取調べでの恫喝暴言の特別公務員暴行陵虐事件で大阪高裁が付審判開始決定を出した。このような事件について、検察の組織だけに委ねていたのでは起訴はあり得なかった。

刑事事件が、検察官個人の犯罪にとどまらず、検察の組織自体の不祥事に発展した場合、他の検察官・上司が共犯者となる場合の背景・原因に組織自体の問題が存在することも考えられる。このような場合、「検察の組織としての独立性の枠組み」で処理することでは公平中立な判断を期待できないことは一層明白である。

2010年に表面化した大阪地検の証拠改ざん事件等の不祥事の際、当時の柳田稔法務大臣が検事総長に対して「厳正な対応」を指示した。この対応は14条本文の一般的指揮権によるものとされているが、同条但し書きの指揮権の発動もあり得る事態だったとも考えられる。

そして、2011年に、東京地検特捜部が小沢一郎衆議院議員に対する陸山会事件の捜査の過程で、石川知裕氏(陸山会事件当時の小沢氏の秘書・捜査当時衆議院議員)の取調べ内容に関して特捜部のT検事が作成して検察審査会に提出した捜査報告書に、事実に反する記載が行われていた問題で、2012年6月27日、最高検察庁は、虚偽有印公文書作成罪で告発されていたT検事、特捜部長(当時)など全員を、「不起訴」とした。