検察庁庁舎Wikipediaより

1966年に静岡市内で一家4人が殺害された強盗殺人放火事件(「袴田事件」)の再審で、9月26日に静岡地裁が言い渡した無罪判決に対して、検察は、控訴期限の2日前の10月8日に控訴を断念することを発表した。

その際に公表した、畝本直美検事総長の談話(以下、「畝本総長談話」)に対して、弁護団が抗議の声明を出すなど、厳しい批判が行われており、SNSのX上でも批判の投稿が「炎上」し、「検事総長」がトレンドに入りした状態が続いた。

畝本検事総長に対する直接の批判は、検察として控訴を断念して無罪判決を受け入れているのに、検事総長として「本判決は、その理由中に多くの問題を含む到底承服できないものであり、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容であると思われます。」などと、控訴断念と矛盾する意味のことを発言し、検察の公式見解として公表していることに向けられている。

弁護団は声明で、控訴を断念して袴田氏の無罪を確定させておきながら、袴田氏を犯人視する談話をするというのは、名誉毀損になりかねないとしている。

検事総長に対する批判がここまで「大炎上」していることの背景には、今、衆議院総選挙で最大の争点となっている「自民党派閥政治資金パーティーをめぐる裏金事件」で、殆どの国会議員が処罰されず、納税もしないままに終わったことに対する不満があるのではないだろうか。

しかも、石破新内閣の発足によって就任した牧原秀樹法務大臣は、10月11日の定例会見で、弁護団から「無罪になった人を犯人視している」と批判が出ていることについて、

「検察は無罪を受け入れている。不控訴の判断理由を説明する必要な範囲で、判決内容の一部に言及したものと承知している。そうした意見は当たらない」

と述べて、検事総長を擁護したとのことだ。

しかし、「判決内容への言及」は、その結論が「控訴すべき事案」というもので、「不控訴の判断理由の説明」とは真逆であるからこそ批判されているのである。「不控訴理由の説明に必要な範囲の論評」だというのは全く通らない。