それは、検察官の権限行使には他の官庁にはない特殊性があるためである。検察庁法1条の「検察庁は検察官の行う事務を統括するところとする」との規定、および個々の検察官が行う意思決定は国家が行う意思決定とみなされることから、個々の検察官は、独立して検察事務を行う「独任制の官庁」とされ、検察庁がその事務を統括すると解されている。

他の行政官庁のようにそのトップである大臣の有する権限を、各部局が分掌するという一般の官公庁とは性格が大きく異なるのである。

つまり、検察官は、担当する事件に関して、独立して事務を取り扱う立場にあるが、一方で、検察庁法により、検事総長が「すべての検察庁の職員を指揮監督する」(7条)、検事長・検事正が管轄区域内の検察庁の職員を指揮監督する(8条、9条2項)とされ、検事総長・検事長・検事正は、各検察官に対して指揮監督権を有し、各検察官の事務の引取移転権(部下が担当している事件に関する事務を自ら引き取って処理したり、他の検察官に割り替えたりできること)を有している。それによって「検察官同一体の原則」が維持され、検察官が権限に基づいて行う刑事事件の処分、公判活動等について、検察全体としての統一性が図られている。

つまり、主任検察官個人の権限行使に対して、上司の決裁によるチェックが行われ、事件の重大性によっては、主任検察官が、所属する検察庁の上司や、管轄する高等検察庁や最高検察庁等の上級庁の了承を得た上で権限行使が行われる。

法務大臣の指揮権

そのような検察の権限行使と法務大臣との関係について、検察庁法14条は、

法務大臣は、第四条及び第六条に規定する検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。

と規定している。

同条本文は、検察官としての権限行使に関して、一般的に法務大臣の指揮監督に服することを規定している。つまり、事件処理の一般的な方針、法令解釈等については法務大臣が個々の検察官に対して直接指揮監督を行うことができる。