ユーロ圏は終戦後から1950年代初頭までは日本とほぼ同じ全要素生産性の伸びを経験したのですが、日本より約15年早くピークを迎えてしまいます。イギリスほどではないにせよ、植民地独立の影響があったのかもしれません。

日本の場合、エネルギー資源をほぼ全量輸入に頼っているので、第1次オイルショックによるGDP成長率の低下が大きくなると予想されていたのですが、むしろ他の3地域より高い位置で横ばいに近い水準を確保しています。

日本の全要素生産性は1995年以降はかなり低水準での横ばいに変わっていますが、それでも2015年にはアメリカとほぼ同率で、イギリスやユーロ圏より高い全要素生産性伸び率を維持しているのです。

にもかかわらず、GDP成長率では先進諸国で最低グループに入ってしまったのは、以下に挙げるふたつの理由があると思います。

政府・日銀が一貫して円安政策を取ったため、日本の生産活動全体が安く評価されていること。 生産力年齢人口が減少するにつれて、貴重なこの年齢層の労働力は高い付加価値の期待できる職につける必要性が上がっているにもかかわらず、相変わらず正規社員として雇用した女子社員を出産育児期に一度労働力市場から退出させ、その後はパート労働しかできない構造が定着していること。

第1点は、ようやく円安インフレの害が実体験でわかりはじめるとともに、諸外国の投資家達による円安・低金利を利用した円キャリー取引の巻き戻しが進んで、徐々に解消していく段階に来たと思います。

第2点は、若年層男性が極度に減少していた終戦直後にはそれなりに合理性のある緊急避難策だった「寿退社」「第一子出産退社」によって若い女性にできるだけ大勢の子どもを産んでもらうという政策が、合理性を失った今でも続いていること自体が異常です。

つまり少しでも早く解消すべき労働慣行ですが、いったん確立された慣行を変えることが困難な日本では、もう少し時間がかかるかもしれません。