彼らはまた、円安によって日本企業の価格競争力を高めれば、輸出産業の好調が経済全体に波及して、輸出拡大からもGDP成長率の加速が期待できるとも主張していました。一見もっともらしい言い分ですが、ほんとうにそうでしょうか。
たとえば、近年日本企業の増益率が高まっているのは事実ですが、それは円安で価格競争力が高くなったおかげなのでしょうか。次の2段組グラフはそうではないことをはっきり立証しています。
上段は、直近の年度で実績が直前予想をどれくらい上回ったかを示しています。日本は主要4地域の中で最大の13.7%の超過達成となっています。ですが、これは円安によって日本企業の価格競争力が強まったからではありません。
それがわかるのが、下段のグラフです。もし、円安によって諸外国から見れば低価格になったので輸出が増えたから予想を上回る利益が出たとすれば、輸出数量は円安による1単位当たりの減収分を補ってあまりある増え方をしていなければなりません。
ところが2023年の日本の輸出数量は減った月が6ヵ月、増えた月が4ヵ月、横ばいが2ヵ月、そして増えた月も12月の5%以外は2.5%以内の微増にとどまっています。日本企業は円安で輸入国にとって安い価格で売れるから増益幅が拡大したのではありません。
むしろ、円安にもかかわらず輸出先での現地通貨価格は横ばいを保つか値上げすることができていたから、増益幅が拡大したのです。また、輸出先の現地価格で値上げをしながら、日本で製造するときのコストは円安なので輸出先の通貨では目減りしているので、その分も増益幅が積み上がります。
つまり、輸出企業の好調は、円安で値下げしながら大量に売ることによって達成したのではなく、輸出先の現地価格は横ばいか値上がりなのに、製造コストは円の評価が目減りした分だけ安くなっているから達成できた好調なのです。