こうしてごく普通の勤労世帯の賢さを見るにつけ、どうしてこれだけ賢い日本の大衆が、自国通貨の価値を毀損してあらゆる労働の成果を低く評価されてしまう「国策としての円安」に唯々諾々として従いつづけてきたのかが、ますます謎になります。

いろいろ考えた末に私が到達した結論は、2016年を中軸として2007~2027年の21年間続く長期危機の時代に、しっかり地に足の着いた健全な経済を維持するために、日本国民は20世紀末を1990年からのほぼ20年間で繰り上げ決済してしまったのではないかということです。

私は16世紀以降の世界経済は21年間の長期危機をふくむ84年サイクルで動いているという仮説を持っています。

84年サイクルになる理由は、個人史で青少年期、壮年期、中年期、老年期が21年ずつ、一家の中で世代交代がほぼ28年周期で、その最小公倍数である84年ごとに時代の転換点がやってくるということです。

次にご覧いただくのはその模式図です。

具体的には、前回の長期危機は短いけれども深刻だった第一次世界大戦後不況が起きた1921年に始まって1941年の日米開戦に終わる1932年を中軸年とする21年間でした。

そして、世界全体で言うと、次の危機は1932年から84年後の2016年を中軸年として、国際金融危機が勃発した2007年から、アメリカと中国という東西2大利権国家が解体する2027年に終わる21年間でしょう。

もし日本が少なくとも1ドル100円、理想的には1ドル80円程度の円高で現在の堅実な経済を維持したままこの長期危機に突入していたら、アメリカや中国のような芯まで腐りきった利権国家による、軍事力をちらつかせたゆすりたかりに遭うでしょう。

こうしたゆすりたかりで国富をむしり取られることを防ぐために、円安による自国経済の意図的な矮小化によって身を隠しているというわけです。