時間がかかることはあっても、最後まで全く財政出動が出て来ないというのは、政治局会議で既に方針を示した以上は考えづらいし、その規模はさすがに前触れもなく出てきた2023年の1兆元を下回ることはないだろう。

従って極端な失望がずっと続くということはない。一方、ランドセール消滅に伴う地方政府の財政悪化は変えられないので、2008年の4兆元の財政出動の時のように、その大半を地方政府が競って拠出する構図にはなりようがない。10兆元は論外である。

そもそも中国で大規模な経済対策が打たれる時は、財政赤字(及び名目上は財政赤字に含まれない特別国債発行)よりも政策銀行によるPSLなどの財政ファイナンスが主体になることが多い。新興国時代は外準取崩しが財源になったこともあった。

パッケージの評価

NDRCの長ったらしい発表から、我々は現状についての情報を得ることもできた。本ブログは1年前から取り上げていたが、ランドセールの消滅と共に財政が行き詰った地方政府は警察組織を利用した罰金の吸上げに熱中した。

民営企業からのゆすりたかりも多発したと言われるが、NDRCが「罰金収入が異様に増加した」地方自治体への問責を明言したことで、このムーヴの実在が世界中に知れ渡ることになった。つまり財政政策の遥か手前の、あまりにも深刻で、低レベルの問題が解決に進んでいるのを我々が見せられているということである。

これは本ブログがこれまで描いてきた、崖から落ちるバスのようなエクストリーム・シナリオを排除するプロセスでもある。

今回のパッケージの筋のよさは、(株式市場のパンプアップを除いて)概ね純粋な民間経済に対する支援に焦点を当てていることである。

これまで習近平政権は経済対策を打ち出すにしても、どうしてもお金を出すだけなのは悔しいようで、いちいち一石二鳥を狙って「ハイテク分野」への支援に偏重し、民間経済や地方財政の苦境を直視するのを拒否してきた。その結果が需要サイドを無視した過剰生産の悪化とデフレ、更に米国以外の国々からの関税である。