これが今回の騒動のポイントでもあり、つまり買っている人も含めて誰も中国経済が中長期的に改善に向かうことを期待していないのである。この間、肝心の中国株式市場は国慶節で休場しており、NYで上場する中国株ETFと香港株が上昇のリレーを続けた。

ヘッジファンドは「銘柄選択の必要すらない」と中国株に殺到した。そのせいで実際の財政出動に対するハードルは大きく上がってしまった。アバディーンは「相場を上げ続けるには5兆元程度の直接的な刺激策が必要で、10兆元以上あれば、市場のラリーは続くだろう」と非現実な要求を中国株市場に突きつける。

国慶節休暇が明けて8日には国家発展改革委員会(発改委、NDRC)の成長促進についての記者会見があり、そこに経済対策発表への期待が集中した。

しかし、今回の相場の滑稽さの集大成とも言えるシーンであるが、世界中の投資家達は、NDRCの愚鈍そうな官僚達が上司を気遣いながら中身のない空疎な長文を棒読みする中継動画を延々と見させられたのである。財政出動の財の字も出て来ず、せいぜい前回の1兆元で使い残した2,000億元の使い道に触れる程度であった。

外国人投資家は怒り狂った。「発改委のトップが何を考えていたのか私には分からない」「率直に言って、明確化を先延ばしにするほど、状況は悪化するだろう。なぜなら、この景気刺激策には財政的な側面がなく、全て金融的なもので、これが株価を支えるなどしていると人々が気付くからだ。これは非常に危険だ」という字面からも怒りが伝わって来る。

国慶節の間に海外勢が持ち上げた相場は、指数や市場にもよるが1日で寄り付きから5~10%ほど投げ売られた。海外ヘッジファンドは失望でロングポジションを解消しただけでなく、過去最大規模のショートをエントリーしたという。これまでほとんど垂直に上昇してきた中国株指数はそのまま垂直に下落するという、極めて滑稽なチャートを描くことになった。