清和会の場合、政治資金パーティーのノルマ超の売上の還流は、20年以上前から慣行化していたとのことであり、議員の側は、ノルマの金額や、その増減等は認識していても、実際のパーティー券売上の処理や「還付金」「留保金」についての具体的事項は秘書に任せていて認識していない場合もあると考えられる。

公職の候補者の政治活動への寄附の供与と受領の犯罪が成立するためには、個別の寄附について具体的な犯意をもって寄附・受領が行われることが必要であり、秘書に処理を任せていた場合には、政治家個人宛の寄附の受領の個別の認識がなく、犯罪が立証できない場合も多い。

実際に上記の罰則を適用して処罰できるのは、議員自身が「ノルマ超のパーティー券の販売を行う積極的な意図」を有している場合で、還付金の管理にも議員自身が関わり、政治家個人宛の寄附として還付金を受領したことについての個別具体的な認識が立証できる事例に限られる。

もっとも、犯罪の成立が立証できなかったとしても、実態としては「政治家個人宛の寄附」なのであるから、前提に受領した寄附の処置、納税などを検討すべきであろう。

裏金についての納税と没収

パーティー券の売上の「還付金」「留保金」について、検察は、所属議員の資金管理団体や政党支部宛の寄附だとして収支報告書の訂正を行わせたため、これらはすべて政治家個人に帰属しない政治資金だということになっている。政治資金であれば、原則として、議員個人に対する課税の対象外となり、議員が私的用途に費消した事実がない限り課税されない。

しかし、既に述べたように、議員個人に帰属する寄附だったのであるから、所属議員個人の所得となり、原則として、所得税の課税の対象とされるべきである。政治活動の費用として使われた事実が領収書等で明らかになる金額を除いて、雑所得として所得税の申告をすべきだ。

検察の捜査処理前提だと、政治団体に帰属した政治資金は原則非課税で「私的流用」だけが課税の対象となるのであるが、今回ヒアリング等で明らかになった事実を前提とすれば、原則として課税対象となり、実際に政治活動に充てた費用だけが控除されるという「真逆の税務処理」となるのである。