以下のような、「公職の候補者の政治活動に関する寄附」の禁止規定の適用を前提に、検察の政治資金規正法の捜査処分が行われるべきだった。
政治資金規正法第21条の2第1項は、
「何人も、公職の候補者の政治活動に関して寄附をしてはならない。」
として「公職の候補者の政治活動に関する寄附の禁止」を定め、また、第22条の2は、
「何人も、第21条の2第1項に違反してされる寄附を受けてはならない。」
として公職の候補者の政治活動への寄附の供与と受領の両方を禁止している。
そして第26条は「第21条の2第1項の規定に違反して寄附をした者」(第1号)「第22条の2の規定に違反して寄附を受けた者」(第3号)について
「1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」
と定め、第28条の2は、
「第26条第3号の規定の違反行為により受けた寄附に係る財産上の利益は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。」
と定めている。
「政治資金パーティー裏金問題」は、派閥側が政治資金収支報告書にパーティー収入を過少に記載した虚偽記入罪(第25条1項)に加えて、派閥側に対しては、公職の候補者の政治活動に関する寄附の供与の禁止(第21条の2第1項)違反、所属議員に対しては、同寄附の受領の禁止(第22条の2)違反で、第26条の「1年以下の禁錮又は50万円以下の罰金」の罰則の適用を前提に捜査処理すべきだった。
もし、この罰則が適用され、処罰された場合には、寄附を受け取った議員側から、寄附額全額を没収すること、既に費消しているなどして没収できない場合は、追徴することになる。
しかし、上記のような罰則適用が前提にされるべきだとしても、それらの罰則を適用して「裏金議員」の処罰が可能だったことになるわけではない。
政治資金収支報告書の虚偽記入・不記載罪の場合に、会計責任者が罰則適用の対象となるのとは異なり、個々の「寄附の受領」の行為について、「公職の候補者」すなわち政治家たる議員個人が罰則の対象となる。実際に処罰するためには、政治家個人宛の寄附を受けるという犯意をもって、個別の寄附を受けたことが証拠により立証される必要がある。