ところが、清和会は、ノルマ超のパーティー券売上についての還付金等が、資金管理団体、政党支部宛ての寄附として政治資金収支報告書を訂正し、議員側でも政治団体に帰属するものとして収支報告書の訂正が行われている。
これは、所属議員側が、検察の取調べにおいて「仮に、収支報告書に記載するとすれば、どの収支報告書に記載していたか」と質問されて、資金管理団体、政党支部のいずれかを答えたことを根拠に、帰属先が特定され、検察の指導によって収支報告書の訂正が行われたものと考えられるが、還付金等の実態に即したものとは言えない。
清和会の場合、数年前まで、「餅代」「氷代」として、所属議員に政治資金を提供していたようであり、それは、予め「振込用口座」として清和会に届け出た銀行口座に振り込まれていた。もし、清和会側が、「還付金」等を、収支報告書に記載する前提で議員側に振込送金したとすれば、清和会に口座を届け出ている政治団体ということになるはずであるが、多くの場合、この届出口座の名義の団体と、政治資金収支報告書を訂正した団体とが一致しない。これも、「還付金」等が、訂正した政治団体宛の寄附ではないことを示していると言える。
結局、議員側が、政治団体宛の寄附との具体的な認識があったわけではないのに、検察の指導によって、資金管理団体、政党支部の収支報告書の訂正が行われ、それによって、議員側に供与された還付金等が、そのまま政治団体に帰属したことにされ、後述するとおり「私的流用」の事実がない限り、所得税の課税の対象にならないとされた。その結果、本来議員個人に帰属する収入であるのに所得税の課税を免れることになり、国民の強い不公平感につながっているのである。
政治資金規正法違反の成否以上のような、今回の「裏金議員ヒアリング」の結果明らかになった事実関係からすると、派閥からの「還付金」「留保金」が、議員個人宛に供与されたものであることは明らかである。検察が、すべての「裏金議員」に対して、資金管理団体、政党支部の宛ての寄附だったとして政治資金収支報告書を訂正するように指導し、その帰属先の政治資金収支報告書の虚偽記入・不記載罪が成立することを前提に捜査処理したのは誤りだったということになる。