しかし、実際のノルマの具体的な金額は、必ずしも当選回数や閣僚経験の有無によって一律ではなく、会長等の派閥幹部の裁量(匙加減)で決められていたようだ。当該議員に対する期待や評価がノルマの金額に反映されることもあり、派閥内の上下の力関係を反映するものでもあった。議員相互間では、他の議員のノルマの金額はわからず、お互いにノルマについて話をすることもなく、所属議員は、そのようなやり方に従うしかなかったとのことだ。

2020年からのコロナ感染下では、パーティー券の販売もままならないだろうという配慮からノルマが引き下げられた。それにより、もともと支持者らに一定の枚数のパーティー券の購入を依頼していた議員は、ノルマ超の販売分についての「還付金」「留保金」の金額が従前より多額に上ることになった。

2. 還付金等の派閥での「処理」とマネーロンダリング

議員側は、初当選の頃から、ノルマ超のパーティー券売上の還付金について、派閥の事務局から、

「派閥で処理済だから」 「政策活動費だから」 「所属議員側で収支報告書に記載しなくてよい」 「記載しないように」

などと指示され、それにしたがってきたと説明している。

三塚、森会長時代など、かつては、パーティー券の売上は、「還付金」等も含めて清和会の収支報告書に計上し、そのうち、「還付金分」を清和会から党本部に寄附し、それを、政策活動費として党が所属議員に寄附するという方法がとられていたようだ。

「議員→派閥→党本部→議員」という流れで、一度、政党に入れて、政策活動費としてバックしてもらうという方法であり、この金の流れであれば、現行政治資金規正法上、政党から政治家個人への寄附は許容されているので、派閥から議員個人に適法にノルマ超の売上を供与できる。

しかし、その党本部との間のマネロンスキームはその後、省略されるようになり、結局、ノルマ超過分を派閥から議員に戻すという現在の「還流スキーム」だけが残ることになった。それに伴い、派閥側も所属議員側も両方不記載ということになった。