また生物によってはマイクロRNAは兵器としても使用されており、ある細菌が他の細菌の成長を邪魔するために特定のマイクロRNAを放出していることも報告されています。
さらに特定の樹木の根に生息する共生は、根に居続けるために「定住許可書」のような役割をするマイクロRNAを放出していることも発見されました。
このように地球上の生命はマイクロRNAをさまざまな用途のためにカスタマイズして使用しているのです。
そして人体においては、マイクロRNAは病気を防ぐためにも使われています。
マイクロRNAと病気の関係
マイクロRNAは免疫機能、怪我の修復、受精卵からの成長、さらに脳機能においても重要な役割を果たしていることが知られています。
近年になって行われた研究では、そんな大事なマイクロRNAが上手く働かなくなってしまった場合には、自己免疫疾患や糖尿病、さらにはがんなど多様な病気が関連することが報告されています。
たとえば、がんの場合には興味深い調節機構が報告されています。
私たちの細胞には、細胞分裂を促す仕組みと細胞分裂を停止させる仕組みが存在しています。
生命が活動を続けるには古くなった細胞やウイルス感染を起こした細胞を排除するとともに代わりとなる新しい細胞を用意する必要があります。
この細胞分裂の速度もまたマイクロRNAによって制御されています。
マイクロRNAが細胞分裂を促す遺伝子を抑制すれば細胞分裂が減り、細胞分裂を抑制する遺伝子を抑制すれば、細胞分裂が増えていきます。
しかし、細胞のDNAの変異が起こると、DNA(設計図)を元に生産されるRNA(設計図の写し)も変異してしまい、マイクロRNAが上手く結合できなくなってしまうことがあります。
あるいはマイクロRNAの設計図を収めた部分に変異が起こってもRNAに結合できなくなってしまいます。