邪推であることを祈るが、もはや藤田氏は、町田の経営への興味を失っているのかもしれない。2018年にクラブを買収した際にも反対の声があった上、翌2019年にはクラブ名を「FC町田TOKYO」に変更するプランが浮上し、サポーターの猛反発に遭ったことで、すぐに引っ込めたという経緯がある。

町田の買収以前の2006年に、東京ヴェルディを運営する「日本テレビフットボールクラブ」の副社長に就任したが、OBのラモス瑠偉監督を招聘しながらも成績が低迷し、クラブ内のゴタゴタが絶えない体制に嫌気が差し、わずか2年で経営から撤退した。

元々は野球好きでヤクルトファンを公言し、麻雀好きが高じて、自ら社長を務めるAbemaTV主催で、競技麻雀のプロリーグ「Mリーグ」を立ち上げたほどだ。その他にも、グループ会社のCygamesがリリースしたゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」が大ヒットしたことへの「恩返し」として、多数のGIホースを所有する馬主という顔も持っている。

民放テレビ局とNHKが束になっても買えなかったワールドカップカタール大会の放映権を買収したほどの資金力を持つ藤田氏が、地縁もなく、悪役イメージが染みついたJクラブを所有するメリットは、日に日に減ってきているのではないか。


町田GIONスタジアム 写真:Getty Images

日本のサッカー文化の行方

アクセスが悪く、山の中にあることを逆手に取り、“天空の城”の異名を持つ町田GIONスタジアムは、ホームゲームの日には数多くの露店が並び、様々なイベントも開催されるなどアットホームな雰囲気だが、一方、クラブとサポーターの関係は決して一枚岩ではない。今回のクラブの方針に疑問を持つファンも少なくないだろう。

今回の騒動とそれに対する対応は、言葉の暴力に対し、法律という盾によって押さえつけようとする試みだ。表向きには争いは収まるかもしれないが、根本的な問題は何一つ解決することなく、禍根だけが残される。