それでもボルダラス監督は2021年、バレンシアに引き抜かれて低迷していた名門を立て直し、リーグ戦9位、スペイン国王杯では準優勝という成績を残した。翌2022年6月に成績不振で解任されると、2023年4月、古巣ヘタフェの指揮官に再就任している。

こうしたタイプの監督はいつの時代にもいるもので、後に世界的名将となったジョゼ・モウリーニョ監督(現フェネルバフチェ)も、ポルトで2003-04シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ(CL)を制した頃は、このタイプの監督だった。

黒田監督は、青森山田高校で全国制覇を果たした高校サッカー指導者という経歴に加え、初めてプロチームを指導するなり、前年2022シーズン15位だったチームに改革をもたらし、圧倒的な強さで2023シーズンのJ2を制した“異分子”としてJ1に迎えられた。J1他クラブのサポーターは総じて“さて、お手並み拝見”といった気持ちだったことだろう。

しかしその強さは本物で、町田は2月24日のJ1開幕戦・ガンバ大阪戦(町田GIONスタジアム)で退場者を出しながら1-1で凌ぐと、その後、名古屋グランパス、鹿島、北海道コンサドーレ札幌、サガン鳥栖を相手に4連勝。一気に台風の目となる。


黒田剛監督 写真:Getty Images

黒田監督のイメージを決定付けた出来事

しかし、ロングスローを多用するスタイルや、セットプレーとカウンターに頼った戦術は他クラブのサポーターから色眼鏡で見られ、“面白くない”との評価を受け始める。そこに、黒田監督へのイメージを決定付ける出来事が起こる。

6月12日に行われた天皇杯2回戦の筑波大学戦。町田は終了寸前に追いつかれ、1-1からのPK戦で敗れると、同監督は自らのふがいなさを反省する一方で、4人もの負傷者を出したことに触れ主審への不満をぶちまけただけでなく、相手の筑波大学の選手に対して「非常にマナーが悪い」、さらにジュビロ磐田に入団が内定しているMF角昂志郎を名指しした上で「タメ口で、大人に向かっての配慮に欠ける」、小井土正亮監督に対しても「指導も教育もできていない」とまくしたてたのだ。