辻内琢也氏の研究は、フクシマ型PTSDの命名に留まらず、放射線の影響を日本のみならず国際的な基準をはるかに超えた過大なものとしたり、量の概念を失した珍妙な解釈が行われるなど、恣意的に福島第一原子力発電所事故の被災地を汚染が甚だしい場所とするものだ。

本来、アカデミアの中で内容が精査され、問題箇所が是正され、主張が撤回されてしかるべきもののはずだが、これらがまったく機能していない。このためWHOの勧告からもはずれる、非人道的な造語「フクシマ型PTSD」で当事者らを苦しめている。しかも辻内琢也氏の主張が三和書籍によって刊行されるに至ったほか、早稲田大学のコンプライアンスが問われることになった。

辻内琢也氏は職を追われる必要はないが、フクシマ型PTSDという名称は撤回され、三和書籍から刊行された『[意見書]フクシマ型PTSD “今やらねばならぬこと”』は回収されなければならない。また、辻内琢也氏、早稲田大学、三和書籍は公式に対処および謝罪を公開すべきだ。

スティグマ生成と利用の構造 1. 不確かな証言

フクシマ型PTSDに関する問題が広く知られるようになったのは、辻内ゼミに属する学生鴨下全生氏のX/Twitterでの投稿だった。

鴨下氏は2011年3月12日に両親とともにいわき市から関東へ移動した自主避難者で、レジ袋や洗面器に鼻血を受けて歩く子供を避難所で見た(本人も同様の鼻血を流した)と主張している。いつ、どこで経験したことか説明を拒んできた同氏は、最近になって旧赤坂プリンスホテルに開設された避難所での出来事であると言い出した。

しかし千代田区、日本赤十字社、ボランティア、同避難所を取材した報道機関から大量の鼻血を流す人の報告はあがっていない。つまり目撃されていないだけでなく、避難所に設置された相談所に甚大な健康被害が報告されていないことになる。なお、鴨下全生氏の母親である美和氏も赤プリ避難所で報道機関から取材されたものの、健康被害について証言しなかったらしく記事にも鼻血の逸話は語られていない。