物価上昇は一時的(Transitory)であった、中立金利の計算が間違っている、政策金利が中立金利に向かうだろうという市場の予期(金利カーブのスティープニング)それ自体が既に引締め効果を持っていた、の三つのどれかである。

本ブログは常々日本には中立金利は存在しない、中立為替だけが存在すると述べてきた。もっとメインストリーム的に分析しても「物価目標の達成は為替レート次第」という論点に合流してくるなら、中立為替説とめでたくアウフヘーベンに達することになる。

21世紀に入ってからの日本の1%の政策金利は米国の5%の政策金利と整合的であり、前回Fedが急速な利下げサイクルに入る際に、日銀が下げそびれると激しい円高に見舞われた。「整合的」とは日米で同程度の引締め方であり、為替レートが発散しないことを意味する。

ドル円が150円以下に戻って来た以上、米国の政策金利パスを含む経済環境と対比して、今の政策金利パスがあまりにも低すぎるというわけではない。逆に米国の政策金利パスの修正に伴い、10月会合時点でドル円が150円を超えていれば、即日利上げにならないにしても9月会合対比で再びややタカ的に振れざるを得ないだろう。

ただその場合も「ビハインド・ザ・カーブには陥っていないため連続利上げは不要」は生きているはずなので、2025年末時点では政策金利はせいぜい0.75%程度にとどまり、その頃には米国の政策金利も3%台に戻っているであろうことを考えると、そのあたりでターミナルレートを付けることになると思われる。

ターミナルレートが0.25%になるには米国の景気後退、1%を超えるには米国の景気減速回避がそれぞれ必要であり、どちらも極論なので日銀のターミナルレートは0.5%~0.75%の間に収まる可能性が高い。ターミナルレートに何となく0.25%のタームプレミアムを足すと、長期金利はやはり0.75%~1%のレンジといういつも通りの結論に落ち着くことになる。