これは何となく最大公約数的に人気の高そうな候補を選出するプロセスではないのである。これを理解できれば今後、石破氏が出馬しなくなった後の高市氏の当選シナリオとその可能性を推定することもできるだろう。

それでも利上げは続く

公平に見て「今」が9月~10月会合あたりのタイムスパンを指す限り、「今利上げするのがアホ」というのは日銀の9月会合でのスタンスと殊更矛盾するわけではないため、日銀の独立性を踏みにじって金融政策の干渉を試みたとまでは言えない。問題はあくまでも言い方なのであった。

逆にいくら株式にとって逆風となる利上げに対して鬱憤を貯めてきたからと言って、不適切な言い方自体に対して快哉を叫ぶようでは、株式評論はともかく、経済学のような高尚な話題に対してコメントするには品格が欠けているというものだ。

それはともかく、石破政権になっても結局「現在、追加利上げするような環境ではない」と言い方だけ変えたスタンスを示しており、一旦進んだ円高は再び反転して円安に傾いた。為替市場はこのように右往左往しているが、結局政治家のどの発言も9月日銀が示した「利上げは挫折していないが、連続利上げにも迫られていない」とのスタンスから逸脱していない。現に石破氏はその後植田総裁の「時間的余裕がある」と同じ趣旨であるとの釈明を行った。

或いは彼らがイメージする据置き期はもっとずっと長いのかもしれないが、少なくとも日銀側のスタンスは誤解を許さない。

一連の干渉を受けた植田総裁の方は面従腹背というか、「日銀の見通し通りに経済・物価が動いていけば、金融緩和の度合いを調整していくことになる。本当にそうかを見極めるための時間は十分にあると考えているので丁寧に見ていきたいと申し上げた」「金融政策は極めて緩和的な状態で、日本経済をしっかり支えている状態にあることも申し上げた」と、正面から利上げ継続を説いている。

日銀関係者が言う「緩和的な金融環境を維持する」とは「中立金利未満の水準内で利上げを継続する」ことであり、何も極低金利政策の維持や追加緩和を行うことを意味しない。

中立金利とターミナルレート