また、DXの進展による需要増も予測されており、実際にデータセンターの建設等の様々な計画が足元で活発化していますが、それら計画の実現性も含めて、どこまで電力需要の伸びにつながるかはやはり不透明です。

次に技術の不確実性です。ここでは発電技術だけに限定して述べます。図2は日立東大ラボが公表した2050年に至る電力需要とそれに対応した電源ミックスの見通しに筆者が加筆したものです。現時点で政策支援を必要とする技術が相当の割合を占めていることがわかります。

矢印で示した部分がこれらに該当しますが、民間企業がこれらの技術への投資に踏み切るにあたっては、政策支援の強さに大きな影響を受けます。その政策が不明確かつ不透明であると、投資決定は難しくならざるを得ません。

図2 2050年に至る電源ミックス 出所:日立東大ラボ(2024)

5. ハイブリッド市場

このように従来の電力システム改革の限界が明らかになる中で、その代替案として提唱されているのがハイブリッド市場です。ハイブリッド市場では、中長期の投資の意思決定が短期の運用から切り離され、次の2段階の競争になります。ハイブリッド市場のイメージを図3に示します。

Competition for the market(市場に参加するための競争):国などが必要と考える量の電源を、長期契約を通じて調達するために行われる競争入札

Competition in the market(市場における競争):Competition for the marketで調達した電源を、最適に運用する短期の卸電力市場における競争

図3 ハイブリッド市場のイメージ 出所:服部(2022)

先に紹介したジョスコウ(2019)でも、ハイブリッド市場を提唱している箇所があります。次に抜粋・引用します。

その際には(=従来の仕組みの機能不全に対応する際には)、市場のインセンティブではなく、政府の政策立案者によって定義されつつある統合資源ポートフォリオに合致した投資を呼び込むことができる、長期契約用の独立した市場を開発する必要がある(=Competition for the marketのこと)。 一旦市場に参入した電源は、時間毎・リアルタイムのエネルギーおよびアンシラリーサービス市場における市場インセンティブに基づいて運用されることになる(=Competition in the marketのこと)

(筆者による仮訳であり、原文は次の通り)