選定された電源は、Competition in the marketにおいて運用され、時間ごとの市場価格シグナルが形成されます。発電事業者はCfDを通じて収入が保証されているため、市場価格は電源の投資回収に影響を及ぼしません。代わりに市場価格は、消費者側が経済合理的な行動を取るよう促すシグナルとして機能します。
また、EUは2021年から2022年にかけて電力市場価格の高騰を経験していますが、このようなときに、政府は発電事業者からストライク・プライスを上回る過剰利益を回収して、それを消費者に還元することを通じて、消費者に対する価格高騰の悪影響を緩和することもできます。
7.日本におけるハイブリッド市場日本のハイブリッド市場は、今年1月に第1回のオークションが行われた長期脱炭素電源オークション(LTDA:Long-Term Decarbonization Power Source Auction)が該当します。
LTDAでは、入札者は発電所の固定費を入札し、落札者はこの固定費について、20年分割払いによる収入が保証されます。 固定費の回収が保証されるので、限界利益の90%、つまり他の市場から得られる収入から変動費を差し引いた額が払い戻されることになっています。
落札者が限界利益の全額を払い戻しても理屈上は収支がバランスするのですが、10%を手元に残すことで発電のインセンティブとすることを狙った制度設計になっています。以上の収支構造を図4に示します。
以上がLTDAの仕組みですが、固定費が当初の入札による予定額を超過した場合の手当てがないこと等の難点が指摘されています。
脱炭素電源は事業期間が長く、投資家の視点から見ると、この仕組みではまだリスクが高いとされています。そのため、8月27日に開催されたGX実行会議では、長期の脱炭素電源への投資に対する更なる支援策を検討していく方針が示されたところです(図5)。