「あれは転職だよ。ライバル企業に移ったが、その代わり、ちゃんと一員としてチームの勝利に貢献した。あくまで組織の選択をしただけだが、選択の責任としてそこを必ず勝たせる。これがサラリーマンだ。しかしお前は違う。お前はいわば起業した社長じゃないか」

「サラリーマン? なんのことを言っているのだ。ちい。まあそうとも言える。それであれば、君は私をリーダーとして間違えていると指摘したが、私には多くの人間が付いてきた。だからネオジオンを興せた。それがリーダーとして優れ、人心掌握ができているということの証明にはならんかね」

「お言葉ですが、大佐。なぜ人々は大佐に付いてきたと思いますか」

「理念だよ。宇宙移民の自由、解放。未来への希望だ」

「違うな、シャア」

「なんだアムロ! ではなぜだ」

「お前がさんざん格好をつけて演説ぶったり芝居じみた自己演出をしたりするからだよ。格好いいから付いてきたんだ。自分でも言っていただろう。道化になることをも厭わないと。いつも真っ赤な服を着て、派出なモビルスーツに乗り最前線まで出しゃばってくる。挙句スパイ作戦の際にも、周囲が全員迷彩でも、一人だけ赤だ。お前はいいが周りは迷惑だぞ」

「では、私はただの中身のない道化だと。馬鹿も休み休みに言え。理念もその根拠も、それを語る資格もある。宇宙移民の自治独立を唱えたジオン・ダイクンの息子である私にしか言えない言葉があるのだ!」

「おいおい、本気でそう思っているのか。言ってしまえば、お前は創業社長の息子で、父親が会社を共同経営者に乗っ取られ、復讐のため身分を隠して会社に潜入した。持ち前の世渡り術で出世して幹部になり、邪魔者を蹴落として復讐を遂げたと思ったが、そのせいで会社は倒産。次に幹部として入った会社では社長になるが、人間関係をこじらせて疾走。その後自分で会社を創業するが、ワンマンのスタンドプレイヤー社長で、前線に出しゃばって飛び出している内にスキャンダルで離脱。残された社員たちでは立ちいかず会社は離散。どうだい、シャア。それでも君は優秀だと言えるかい」