現在、東京湾周辺には多くの火力発電所がありますので、もし富士山が噴火して同じくらい火山灰が積もれば、大きな影響がでます。火力発電所ではガスタービンを回すために大量の空気を取り入れているため、その空気と一緒に火山灰を吸い込んでしまい、フィルタの目詰まりで空気が取り込めず発電機が停止してしまう可能性が考えられます。
電力会社はこの点を考慮して対策を講じていくと聞いています。
――火山灰が電力インフラにまで影響を及ぼすとは驚きです。
石塚:火山灰が湿っていると、送電線の碍子(がいし)と呼ばれる白くてそろばんみたいな部品間で火山灰がショートを起こし、停電につながることもあります。送電線の碍子は、本来なら絶縁体として機能するように瀬戸物を積み重ねた構造になっていますが、火山灰に含まれるイオンにより導電性が生じ、ショートを引き起こすのです。
数mm程度の湿った火山灰でもショートが起きて送電が止まる例が、ニュージーランドや阿蘇で報告されています。
――噴火というと土石流などのインパクトが強かったので、火山灰で停電ってあまり結びつけて考えた事がなかったですが、富士山が噴火した場合、首都圏大停電という事態が考えられるんですね。東京や横浜まで届いたというお話からも、火山灰は影響が及ぶ範囲が広いので、その原理で火山灰の停電が発生したらインフラの復旧がかなり困難になりそうですね。たとえ火山から離れていても決して他人事ではない問題になりそうです。
火山学者から見ても美しい富士山の魅力
―― さきほど富士山はまだ若いので美しいというお話が出ましたが、火山の形というのは噴火を繰り返すことでどんどん変わっていくものなんでしょか? 富士山も今とは全然違う姿だったりしたんですか?
石塚:3500年前頃の富士山は現在よりもさらに美しい姿をしていたと考えられています。山頂部にあるような大きめの火口や谷はなく、もっと整った山容だったのではないでしょうか。そして平安時代には頻繁に噴火していました。