逆に、山腹斜面でたくさんの火口ができていれば、山腹噴火の時期があったことを示唆しています。
また、過去の溶岩流の下にある炭化木の年代を調べれば、噴火の時期も特定できます。こうした地質調査の積み重ねから、富士山の噴火史が少しずつ明らかになってきたんです。
―― 噴火様式が変化する要因は、まだよくわかっていないんですか?
石塚:正直言って、まだ十分な解明には至っていません。マグマの性質や量、地下のマグマ溜まりの状態など、様々な要因が絡んでいると考えられます。ただ、噴火様式の変化を読み解くことは、富士山の特性を知る上で避けて通れないテーマです。
私自身、大学の研究室などと協力しながら、その解明に取り組んでいきたいと考えています。
火山大国である日本は、時に噴火という大災害に苛まれながらも、美しい景観や地熱、豊かな水、それによって得られる農作物など、さまざまな火山の恵みも享受してきました。
日本の象徴である富士山もまた活火山の一つです。
私たちは山々を見るとつい「時を経ても変わらない自然の雄大さ」のようなものを感じてしまいますが、研究者は山の一生に目を向けて、その形成の理由から、火山活動の変化、そしてその終わりを解明しようと試みています。
石塚さん自身、そのすべてはまだ解明できず、未知の問題に取り組み続けています。
それは火山を理解することで未来の災害に対処するという意義もありますが、何よりも研究者自身が火山の魅力に取り憑かれてしまったからとも言えそうです。
富士山も平安時代は形が違ったように、活火山は噴火活動によっていつ形を変えてもおかしくありません。私たちが見て美しいと感じる自然の姿、山の形には科学的にも美しいと呼べる背景があります。
富士山の姿が噴火活動を重ねて奇跡的に今この時代にだけ生み出された景観なのだと考えると、改めてその美しい山容を見るとき、この時代に生きるありがたさを感じられるかもしれません。