■ボケ老人のやりすぎた天罰
ここまで追い詰められてようやく、他の神々は重い腰を上げました。セクメトを創ったラーに対して「いい加減にしないと人間がいなくなってしまう。人間が滅亡すれば、誰も我々を敬えなくなる。さらに地上はセクメトのせいで大混乱、今や誰も我々に対して供物や祈りを捧げていない」と、その責任を追求するのです。
神話の文脈から読み取るに、ラー自身は人間に少しお灸をすえる程度に考えていたと見られます。また、他の神々から追求も受けたこともあってか、「さすがにやりすぎた」と後悔しはじめました。
また、生みの親であるラー自身が、セクメトのあまりの残虐さを恐れはじめたこともあり、結局ラーはセクメトを呼び戻し「確かに人間を殺せ、と命じたが、これほどやれとは言っていない、もう十分だ」と諌めます。
しかしセクメトは「私は世界中の人間を皆殺しにするためだけに、あなたが創り出した存在です。いまさら口出しなどされても後には退けませんし、何より人間を殺すのが楽しくてたまらないのです」と、人間の虐殺を止めようとはしなかったのです。
このままでは本当に人類が滅亡してしまう、と慌てたラーは急いで神々を集め、セクメトを止める手段を考え始めます。というのも、太陽神ラーが全力を尽くして創り出しただけあって、セクメトの破壊と殺戮の力はあまりにも強く、全ての神々の力をもってしても、その動きを止めることすらままならなかったのです。