■「人類滅亡の物語」の後のセクメト女神

古代エジプト最強の女神「セクメト」による殺戮神話『人類滅亡の物語』がエグすぎる! 本当は超怖いエジプト神話を徹底解説!
(画像=セクメトの石像 画像は「Wikimedia Commons」より引用,『TOCANA』より 引用)

 人間への憎しみと殺戮衝動を抜き取られた後のセクメトは、それでもなお復讐の女神であり続けていたのですが、母性豊かで優しい穏やかな性格の女神となり、エジプトの守護女神として大いに崇拝を集めたといいます。

 実は世界的に見られる信仰の形ですが、このように人間に害をなす強力な破壊や疫病の力を逆転して「強い守護の力」と捉えれば、その神は強い力で人々を守る守護神となるのです。

古代エジプト最強の女神「セクメト」による殺戮神話『人類滅亡の物語』がエグすぎる! 本当は超怖いエジプト神話を徹底解説!
(画像=アメン・ラーの像。太陽神ラーと習合された、おそらく習合された神としては最も知られた存在 画像は「Wikimedia Commons」より引用,『TOCANA』より 引用)

 また当時のエジプトにおいては「習合」と呼ばれる、「●●という神は××という神と同じ存在である」という考え方が一般的でした。セクメト女神は「ラーの眼から創られた」という点から、ラーの眼に関連ある数多くの女神と関連付けられています。

 特に太陽神ラーは、非常に数多くの神と習合されています。おそらくですが「似ている神は合体させてより強大な力を持つ神とすれば、双方の信者を取り込め、神殿も共有可能となるうえ、同時に礼拝も簡単にできる」というような、合理的な考え方から行われていたものと思われます(エジプト神話においては、そのために信仰と伝承が失われた、現在では謎となった神が少なくないのですが……)。

 その一方で「無名の神を人気のある神と同一視することで、無名な神を持ち上げる」という意図から行われた、と思われる習合も見られます。こちらは古代ギリシャにおいて「自分たちの信仰する●●という神は、全知全能の神ゼウスと関係を持った愛人である」とすることでその威厳を高める図式とほぼ一致します。

古代エジプト最強の女神「セクメト」による殺戮神話『人類滅亡の物語』がエグすぎる! 本当は超怖いエジプト神話を徹底解説!
(画像=死者の書 画像は「Wikipedia」より引用,『TOCANA』より 引用)