理論的には株価は個別企業の利潤動向(EPS)に、為替相場は貿易収支、貿易外収支、そして両国の金利差に左右される。両者は違うものだが、かつての日本のように輸出関連企業の比率の高い国では、為替相場と株価が連動することが認められた。

貿易収支が黒字なら為替相場が株価に影響を与える。しかし、収支が均衡していれば為替の作用は相殺され、赤字なら逆になるはずである。このあたりの事情が、今回の暴落の前後でどう変化したかを検証しなければならない。これまでは円安→株高でも、今後は円高→株高もありうる。過去にもそれはあったのである。

次回の予告

8月の暴落には不可解な点がある。金利が上昇するとなれば銀行には貸出利ザヤの拡大が見込まれるはずだから、収益は良くなると予想される。だから、これまで“利上げ”が予想される度に、相場全体は下がるのに金融関連株は上昇した。ところが、8月の暴落時には銀行株も下がった。地方銀行の多くはストップ安に見舞われた。なぜか?

メガバンクには、海外などの逃げ道があるが、地方を拠点とする地域金融機関にはそれがない。その多くは株式投資も不慣れである。地方の貸出は伸びず、その結果、地方銀行のPBRは『The NEXT』の第3章・第4章でみたように異常に低い。その指摘がなされ、東京証券取引所から是正を勧告されても、わずかに上昇しただけである。

私が地域金融機関に関心を持つのは、上記の理由に加えて、それらが“地方創生”という課題に大いに関係があるからでもあるが、この問題は資料を検討した上で「名もなき暴落③」のテーマとしたい。

むすび

8月5日の暴落には未だに名前がない。「令和のブラックマンデー」はアメリカ人にはわからないし、「植田ショック」では学者総裁には気の毒だ。理論の帰結としての信念を語っただけなのだから。