グラフを見ればコロナ以降MRF残高は増加している(図4)。これを図2の日経平均株価の長期トレンドの図と重ねてみれば両者に関係があるのは明らかだろう。

図4 MRFの純資産総額の推移 出典:Quick Money World、2024.1.18

株価の史上最高値に相応じてMRF残高も過去最高の15兆5,796億円(9月13日)となった。現時点ではさらに増加しているであろう。また新NISA(少額投資非課税制度)の普及で投資信託には年初から5,000億円が流入し、その大半は待機資金の受け皿としてMRFを利用している。

MRFは、いわば株式取引専用の普通預金口座である(利子はわずかだがあるので当座預金ではない)。株式を買うとき、まずはMRFに資金を入れ、売買が成立すれば、それで決済する。

注意すべきは、資金の流れは銀行預金→MRFだが、株式を売却した際にMRF→銀行預金の逆流がさほど生じない。つまり待機資金になる。だから、株価の上昇、株式代金の増大とともにMRFは増える。

逆に見ると、MRFの増加は株価の上昇なのである。ただしピッタリ連動するわけではない。日本の個人投資家は株価が下降線にあるときは売却代金をMRFに残さない傾向がある(特に暴落時には)。逆に上昇トレンドのときは残す傾向がある。MRFの残高が高水準であることは投資家が“強気”を維持していることを示す。

MRF残高は預金残高との競合関係にある。3月に利上げがあったが、このままでは資金は預金に逆流するからMRFの金利も引き上げざるを得ない。3月まではほとんどゼロだったのが、現在(9月)では0.15%あたりにまで上昇している。これは遊休貨幣の獲得をめぐる銀行と証券の闘いである。

方程式は有効

アメリカの金利0.5%、通常の2倍の下げて、ニューヨーク(9月19日)、東京(9月20日)も株価は大幅に値上りした。『The NEXT』で示した方程式がいまだに有効なことを示している。しかし、方程式に要素を追加する必要があるかもしれない。それは為替相場である。

EPSは一株当たりの利益、Rは実質金利、Xは期待プレミアム、gは当該企業の期待成長率