今回は、アメリカが先にいつもより2倍の幅で下げてしまった。つまり金利差は0.5%分縮まった。日銀の切迫感は少し小さくなった。敢えて日銀の側が利上げをする必要性が少なくなった。アメリカの利下げで助かった格好だ。総裁の発言にもそんなニュアンスがあった。

8月の暴落について

「私どもの考えが十分に伝わっていなかったという批判があることは承知している」(同会見)

市場には十分すぎる程に伝わった。そして日本銀行内部が混乱していることも判明した。8月5日の暴落、翌日の暴騰がその証拠である。「金融市場」の不安定を生み出したのは、8月の発言だ。

総裁、副総裁の演じるドタバタ劇の後、日銀は平穏を装うのに躍起になっているようだ。国会で総裁は“意見に相違”はないと発言し、9月12日には審議委員の一人が「段階的な利上げが適当」とし、「2026年度までに1%の短期金利の上昇」が必要とも述べた。これに他の二人の審議委員が同調する。総裁は間違っていない、というわけだ。

私も間違っていないのだと思う。金融論を学んだ人なら、金利は“時は金なり”の通念が現象したものであり、資本主義の常識であることを知っている。それがゼロになり、さらにマイナスになるなどというのは、資本主義から時間軸が抜け落ちたことを意味する。

異常は長続きせず、いつか正常に戻る。そう考えて当然だ。考えが及ばなかったのは株式市場の反応であり、そうなってしまう株式市場の現代の構造(株式市場の金融化)であろう。

株式市場の金融化

企業が保有していて投資に向わない資金、家計が保有していて消費に向わない資金。これらは、現在のような超低金利だとその幾分かは手持ち状態になるが(いわゆるタンス預金)、大方は金融機関(主に銀行)に移動する。現代の移動は電子系だから、極めてローコストで、しかも技術的に容易である。

銀行は集まった資金を貸出す。一部は国債などの債券を買う。その残りが焦点だが、日本銀行に預金される。これを日銀当座預金預け金という。これは毎月発表されている。以下は最新8月末の数字である(表2)。