毎月分配型投資信託は、国内で根強い人気がある。金融機関の人気商品としてすすめられることも多いが、どのような投資信託なのだろうか。毎月分配型投資信託の仕組みや、そのメリット・デメリットについて見ていこう。

目次
1. 毎月分配型の投資信託とは?
2. 毎月分配型投資信託の2つのメリット
3. 毎月分配型投資信託の3つのデメリット
4. 毎月分配型投資信託が向いている人
5. 毎月分配型投資信託が向いていない人
6. 毎月分配型投資信託を購入する際はデメリットを慎重に判断する

1. 毎月分配型の投資信託とは?

毎月分配型の投資信託とは、具体的にどのような仕組みを持つ投資信託なのだろうか。

毎月分配型投資信託とは毎月決算を行い分配金を支払う投資信託のこと

毎月分配型投資信託とは毎月決算を行い、収益などの一部を分配金として毎月分配する投資信託のことだ。毎月の分配はあくまでも運用方針であり、運用状況によっては分配金が支払われないこともある。

分配金は保証されているわけではないため、銀行預金や債券の利息などとは異なる。

毎月分配型投資信託の分配金はどこから出る?

毎月分配型投資信託を理解するためには、分配金が支払われる仕組みを理解しなければならない。

投資信託は、複数の投資家から集めた資金を1つのプールと見なして運用を行う。運用益が出た場合はプールの資産が増え、分配金もそのプールから支払われる。つまり、分配金の支払いとはプールから投資家へ資産を配分する行為であり、分配金を支払った分だけプールの資産は減り、基準価額も下がる。

これが銀行預金や債券の利息との違いだ。銀行預金や債券には投資元本や額面金額があり、利息は投資元本や額面金額とは別に支払われる。利息を受け取ったからといって、その分銀行預金の元本や債券の額面金額が減ることはない。

投資信託の分配金は、あくまでも1つのプールから支払われるものであることを覚えておこう。

投資信託の普通分配金と特別分配金の違い

投資信託の分配金には、普通分配金と特別分配金がある。違いは、投資家の儲けから支払われる分配金であるかどうかだ。

普通分配金とは、投資家の儲けから支払われる分配金のことだ。投資家の投資資金(個別元本)を上回る部分からの分配金であり、純粋な利益の受け取りといえる。普通分配金は利益なので、当然ながら課税対象だ。

特別分配金とは、投資家の利益ではない分配金のことだ。個別元本を下回る部分から支払われる分配金であり、投資元本の払い戻しを意味する。特別分配金は投資した元本の一部の受け取りであり、利益ではないため非課税だ。投資元本が払い戻されるため、特別分配金が支払われた分だけ投資資金(個別元本)は減る。特別分配金はタコが自分の足を食べる様になぞらえて、タコ足配当と呼ばれることもある。

このように支払われる分配金にも2つの種類があるため、分配金を受け取った場合は、それが普通分配金と特別分配金のどちらなのかを把握しておかなければならない。

毎月分配型投資信託は根強い人気がある

毎月分配型投資信託は、「毎月の分配金をお小遣い感覚で受け取れる」ことから人気がある。国内投資信託の純資産総額ランキングなどを見ると、多くの毎月分配型投資信託がランクインしていることがわかる。

一時期は人気を維持するため、運用状況に関わらず毎月多くの分配金を支払い、多くの投資家が特別分配金を利益と勘違いしたことが問題になったこともある。その後、多くの投資信託は毎月の分配金を抑制したが、それでも毎月分配型投資信託は根強い人気がある。

2. 毎月分配型投資信託の2つのメリット

毎月分配型投資信託には、どのようなメリットがあるのだろうか。主なメリットを2つ紹介しよう。

メリット1……毎月小まめに利益を確定できる

毎月分配型の投資信託は毎月小まめに利益を確定できる。毎月の分配金は投資家のプールから支払われるため、儲けが出ている場合の分配金支払いは利益の確定を意味する。

投資は売却のタイミングが非常に難しい。相場が右肩上がりで上昇している場合は分配金を受け取らずに投資を続けたほうがよいが、相場を完全に読むことは難しく、売り時を逃して相場が冷え込んでしまう可能性もある。毎月分配型投資信託は、小まめな利益確定を自動的に行うことで、売り時を逃すという失敗を減らす効果がある。

メリット2……ある程度の資金が毎月口座に入る

毎月分配型投資信託は毎月分配金を支払うことを投資方針とした投資信託であるが、ある程度計算できる資金が毎月入金される仕組みもメリットといえるだろう。

毎月分配型投資信託を購入する投資家の主な目的は、毎月のお小遣いや年金の足しにすることだ。毎月の分配金が大きく変動すると投資家は計画を立てにくくなるため、多くの毎月分配型投資信託は、毎月の分配金額の変動を極力抑え、一定の分配金を毎月出すという方針で運用を行っている。

毎月一定の資金が入金されるため、その範囲で生活すれば預貯金が減ることはない。定期預金から毎月一定額を引き出したり、毎月自分で判断して株式などを売却したりするよりも、手軽に投資資金を手元に戻すことができるのだ。

前述のとおり分配金の支払いは保証されたものではなく、運用状況が悪い場合は分配金が出なかったり、減ったりすることもあるので注意は必要だが、毎月分配という仕組み自体がメリットになる人は多いだろう。

3. 毎月分配型投資信託の3つのデメリット

毎月分配型投資信託のデメリットを3つ紹介しよう。

デメリット1……複利効果を得にくい

毎月分配型投資信託は、複利効果を得にくい投資信託だ。

投資においては、複利効果を活用すると効率のよい運用ができる。複利効果とは利益を再投資することで、運用益が雪だるま式に膨らんでいくことだ。

毎月分配型投資信託は分配金を出すことを前提に設計されているため、受け取った分配金を自分で再投資しなければ複利効果を得られない。しかも、普通分配金には税金がかかるため、再投資に回せる資金がその分減ってしまう。

デメリット2……トータルの損益計算が難しい

毎月分配型投資信託の多くは、毎月の分配金額の変動を極力抑え、一定の分配金を毎月出すという方針のもとに運用が行われている。投資家のニーズがそこにあるからだ。しかし相場は変動するものであり、常に毎月の分配金を超える利益を上げるのは至難の業だ。

運用成績が悪い月でも分配金を支払うケースは多く、運用成績が悪い時期が続くと特別分配金として支払われることになるが、それを「利益が出ている」と勘違いしてしまう恐れもある。

特別分配金は元本の取り崩しであり、利益ではない。特別分配金の分だけ個別元本は減るが、特別分配金を利益だと錯覚してしまうと、投資信託を売却する際に個別元本が大幅に減っていることに驚くだろう。

受け取った分配金が普通分配金(利益)と特別分配金(元本の払い戻し)のどちらなのかがわからなければ、正確な損益を把握できない。毎月分配型投資信託はこのように設計されているため、トータルの損益計算が難しいこともデメリットといえるだろう。

デメリット3……コストが高い

毎月分配型投資信託には、コストが高い商品が多い。毎月分配型投資信託は毎月決算を行うため、決算のコストや分配金支払いのコストがかかるからだ。安定した分配金を出すためにデリバティブ取引などを組み入れている商品も多く、そのような運用にもコストがかかる。

毎月分配型投資信託は、運用コストである信託報酬が高い商品が多い。対象指数との連動を目指すインデックスファンドのようなシンプルな商品と比較すると、その差はかなり大きい。毎月分配型投資信託は設計によってコストが高くなりやすい点もデメリットとして認識しておくべきだろう。

4. 毎月分配型投資信託の運用が向いている人

毎月分配型投資信託のメリットとデメリットを説明したが、毎月分配型投資信託はどのような人に向いているのだろうか。

定年退職をしたシニア層

毎月分配型投資信託が向いている人としては、定年退職をしたシニア層が挙げられる。定年退職後、年金だけでは生活が厳しく、退職金を取り崩しながら生活しているような人だ。

退職金というまとまった資産があり、それを取り崩しながら生活をしている場合、毎月分配型投資信託であれば「運用」と「定期的に資産を取り崩していくこと」が同時にできる。

まとまった資産はあるが定期的な収入が少ない人

まとまった資産はあるが定期的な収入が少ない人も、毎月分配型投資信託を検討すると良いだろう。毎月分配型投資信託は、運用をしながら資産を取り崩していけるという意味で、便利な商品ともいえる。

注意したいのは、分配金はあくまでも資産を取り崩している点である。分配金を利益と捉えてしまうと、特別分配金によって元本が減ったときに焦ってしまったり、いざ売却するときに元本の目減りよって計画が狂ってしまったりする恐れがある。

5. 毎月分配型投資信託の運用が向いていない人

反対に、毎月分配型投資信託が向いていない人はどういう人だろうか。

老後資産を作るための投資を行う現役世代の人

毎月分配型投資信託が向いていない人としては、老後資産を作るために投資を行っている現役世代の人が挙げられる。毎月収入があり、投資で将来的な資産を増やしていきたいというニーズが強い人だ。

この場合は毎月分配金を受け取るよりも、再投資をして複利効果を得るほうが効率的に運用できる。現役世代で収入がある人は、生活費は毎月の収入から捻出し、投資はあくまで将来的な資産として考えて運用したほうが良いだろう。

資産を増やしたい人

資産を増やしたい人も、毎月分配型投資信託は避けたほうがよいだろう。毎月分配型投資信託は複利効果を得にくく、コストも高いからだ。

毎月分配型投資信託は「資産を定期的に取り崩したい」というニーズがある場合に検討するべきだ。「いつまでにいくらまで資産を増やしたい」といった目標がある場合は、毎月分配型投資信託だと効率が悪い。

6. 毎月分配型投資信託を購入する際はデメリットを慎重に判断する

毎月分配型投資信託は根強い人気があるが、デメリットもある。定期的に資産を取り崩したい人には便利な商品だが、検討する際は仕組みを十分に把握し、デメリットも考慮した上で慎重に判断してほしい。

 

樋口壮一
執筆・樋口壮一
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP

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